「NIHUプログラム イスラーム地域研究」  一般講演会、  山形大学    2007年7月22日(日) 

  「パレスチナ問題の現状を考える
            -映像で観るイスラエル占領40年」

     第3時中東戦争(1967年6月)から40年、依然としてイスラエルの占領下にあるパレスチナをめぐる情勢は、ま
     すます深刻なものになりつつあります。NIHUプログラム イスラーム地域研究(東京大学拠点)では、研究成果
     の社会還元の一環として、パレスチナ問題を考える下記のような講演会を開催いたしました。


講師  土井敏邦氏(ジャーナリスト)
  「永続化する占領-パレスチナからの報告」

  土井氏の報告は、自身の撮影した複数の短編映像を交えて、パレスチナの現在の政治状況を分析する内容であった。ジェニン
  難民キャンプの映像では、2002年4月のイスラエル侵攻直後の様子から、アラブ首長国連邦の援助で家が建て直された後の
  人々の足跡を追い、残された問題や心の傷を描いた。ガザ地区のハイデル・アブデル・シャーフィーへの1999年のインタビュー
  では、チュニスなどからの帰還組とインティファーダを占領で戦った人々の間の軋轢が、自治政府の腐敗などを焦点に表面化して
  いることが明らかにされた。ファタハ政権への不満は、2006年のガザ地区での撮影の中でも地元住民の声として聞かれたが、必
  ずしもそれがパレスチナ人の分断を意味するのではない様子もうかがわれた。質疑では、パレスチナ側の武器の入手経路や次世
  代の政治指導者など、具体的な現状を問う内容が活発に議題に上った。


講師  臼杵 陽氏(日本女子大学教授)
  「閉塞状況下のイスラエル-分離壁とアラブ追放のあいだ」
     ドキュメンタリー映画「ルート181」 
 (監督:ミシェル・クレイフィ、エイアル・シヴァン;山形国際映画祭       2005年最優秀受賞作品)の解説を行います。
  
   『ルート181』は、イスラエル出身のユダヤ人監督シヴァンとアラブ人監督クレイフィの二人が、国連分割決議181号で決められ
  たイスラエルとパレスチナの「幻の国境線」をたどるという記録映像作品である。講演者はこの冒頭十数分を実際に聴衆に上映し
  てみせ、その中で展開されていた登場人物の発言、監督との会話から、既存のイスラエル・イメージを覆すねじれた現実を読み解
  いた。講演後、ペルシア湾岸諸国などのイスラーム国が、イスラエル/パレスチナ問題を解決に導くための役割などについて、質
  疑応答が交われた。



  アンケートから

  20代の女性;  正直に言って、付き合いで来た為、最初は興味を持っていませんでした。しかし、映像を通じて(使って)の講演
          で、詳しく分からなかった私にも理解することができました。また、映像を見て考えさせられる部分が多くありまし
          た。

  40代の男性;  ナチスドイツのユダヤ民族迫害から生き残ったユダヤ人が、何故核武装までし、パレスチナ人と報復合戦をし続
          けるのでしょうか。
          日本人はヒロシマ、ナガサキ、東京大空襲とアメリカによる無差別攻撃を受けたのに、「反米」にはならず、「反
          核」「非武装」の道を選んだのと違いはなんでしょうか?

  20代の女性;  一方的な視点でなく、パレスチナ問題を語って頂いたおうに思います。ルート181は、去年ドキュメンタリー映
          画際で感じた疑問そのものでした。

  30代の男性;  土井さんのお話は、やはり現地の人間をよく知る方の話として迫力があった。ファタハに関して抱いていた疑惑
          がより明確になった。「占領」という根本問題を再認識した。

  50代の女性;  絶望的な根の深さ、苦しみ、話を聞けば聞くほど、平和が遠く難しい。本当のユダヤ人はキリストに見る平和主
          義者ではないか?あの憎しみはどこから、いつの時代から続いてきたのか?ルート181を観てからイスラエル
          民族が嫌いになりました。ライオンがアリをつぶしているようで・・・

  50代の女性;  「ミュンヘン」という映画の中に、イスラエル青年とパレスチナ青年の会話があります。
          イ:「あの不毛の地を本当に欲しいのか?」
          パ:「君達はあの不毛の地を何年とり戻そうとしてきたのか?自分達も何年かかってもとり戻す」
          イスラエル建国に関わった国連加盟の国々は、パレスチナ側に被害を押し付けた責任をどのようにとるつもり
          なのか。その答えを求めて講演会に来ました。現実を告発することに立場をおかれている二人に感銘を受けま
          した。この講演会が山形で開催されましたことに感謝いたします。

  20代の女性;  土井さんの生の映像がとても興味深かったです。日本にいて、今回のような映像を見ることができて、とても貴
          重な体験ができました。

  60代の方;   新聞を読む際の考え方が変わったように思う。




                        NIHU Program: ISLAMIC AREA STUDIES
                          IAS Center at the University of Tokyo (TIAS)
                                            
GROUP2
  Structural Change in Middle East Politics