2009年度第5回研究会:
 「パレスチナ研究班」第2回研究会
 

  日時: 2009年10月6日(火),16:00時から18:00時
 場所: 日本女子大学 百年館高層棟7階史学科
 報告者・報告題目: 今野泰三(大阪市立大学文学研究科)
      「西岸地区とガザ地帯におけるイスラエル入植地の類型学」

 

本研究会は、NIHUプログラム・イスラーム地域研究東京大学拠点・研究グループ2・中東社会史班のメンバーを中心とする定例研究会として、外部参加者を迎えて新たに発足された勉強会である。中東和平交渉における展望と新たな可能性を探るため、若手や中堅研究者を中心に、基本的な問題の所在や論点について知識と考察を深めていくことを目的とする。

 本初回の報告では、シオニスト入植史という観点からシオニズムを理解するためのスタート地点として、1967年戦争以降に、ヨルダン川西岸地区とガザ地帯に建設されてきたイスラエル入植地の、戦略上の位置づけと性格別の類型化が行われた。報告者はまず、1980年代初頭の政治地理学者による研究の論点を整理した後、それらの研究の問題点として、1967年戦争直後に始まったヨルダン渓谷での入植フェーズにおける、宗教シオニストと修正主義シオニストの役割が十分に論じられていない点を挙げた。その上で報告者は、これらシオニスト諸潮流の入植者グループが建設したヨルダン渓谷の入植地を調査し、これらシオニズム諸潮流と当時の労働党政権の関係性を見直していきたいと述べた。質疑応答では、水利問題、米国のキリスト教右派からの支援、ロシア系移民の流入、第一次インティファーダ、オスロ合意、「壁」建設、大イスラエル主義イデオロギーなどの重要事象と入植地の関係性等について質問が投げかけられた。さらに、政治状況などのコンテクストを踏まえて入植地問題を捉えることの重要性や、グッシュ・エムニームの影響力や変質の過程を踏まえた議論をすることの重要性、また、1947年分割案以降の入植地建設と1967年戦争で新たにイスラエルが占領した領土での入植地建設との比較検討の必要性などについて、コメントがあった。

                             (錦田愛子)



                        NIHU Program: ISLAMIC AREA STUDIES
                          IAS Center at the University of Tokyo (TIAS)
                                            
GROUP2
  Structural Change in Middle East Politics