2007年度第11回研究会
  
 
日時: 2007年11月18日(日) 16:00~18:00
  場所: 東京大学理学部棟
  講師: Khairy Tourk教授(イリノイ工科大学)
      『Moslems in the West』

経済史から現行の国際問題まで幅の広いテーマに精通しているKhairy Tourk教授は9.11以降に欧州や米国における(アラブ)ムスリム社会を囲む状況・環境に関して2時間に及ぶ講演をした。

Tourk教授は欧州あるいは米国におけるムスリム社会の相対的地位(政治的および経済的)とマジョリティとの統合の仕方が大きく異なり、必然的大西洋両側に定住しているムスリム社会と政府あるいはマジョリティとの関係は本質的に意を異にしているという。

米国において(アラブ)ムスリム社会は比較的に豊かで米国政府や社会との間に大きな課題を抱えていなかった一方、米国の支持を独占したいイスラエルのロビー活動に(間接的に)影響を受けた。

9.11の同時多発テロの発生は(アラブ)ムスリム社会に対する米国の世論を極端に悪化させ、この雰囲気は(アラブ)ムスリム社会に時に恐怖も与えるほどだった。しかし総じて米国社会に体化している寛容さが歯止めとなり、(アラブ)ムスリム社会を標的とする過激な行動はほとんどみられなかった。

一方、9.11の結果、(アラブ)ムスリム社会の影響力が縮小してしまう反面、強力なイスラエル・ロビーはネオ・コン(新保守)と手を組み、米国の新政策=「対テロ戦争」をイスラエル利益に一致する方向に向かわせようとした。米国におけるイスラエル・ロビーはイラク戦争開始に向かっての土台づくりに大きく協力して、加担し、イスラエルの存在を脅かしていたフセイン体制を転覆させた。

このロビーは米国内においても一部のキリスト教勢力と協力しながら、(アラブ)ムスリム社会のさらなる影響力縮小を図っている。イラク戦争の泥沼化の結果、ブッシュ政権におけるネオコンの地位の衰退が目立っているといえ、イスラエル・ロビーはまだ健在であり、巻き返しを図っているだろう。究極のところ短中期的視点でみれば米国の(アラブ)ムスリム社会を囲む環境がイスラエル・ロビー活動、しいていえばイスラエル・パレスチナ(アラブ世界)との対立に大きく左右されるといえるだろう。

 

 

 


                        NIHU Program: ISLAMIC AREA STUDIES
                          IAS Center at the University of Tokyo (TIAS)
                                            
GROUP2
  Structural Change in Middle East Politics