2007年3月1日から3月22日まで、トルコの複数の都市でイスラーム復興女
性運動について、組織やネットワークのリーダーを中心にインタビュー調査
を行った。調査地は、アンカラ、アフィヨン、ディヤルバクル、バトマン、ウルファ、
ワン、イスタンブルでインタビュー対象者は22組織から26人である。
トルコでは、世俗主義とイスラーム復興運動の相克が民主主義の定着と
成熟の鍵を握っているといえるが、中でもイスラーム復興女性運動は、世俗
主義国家権力と保守・家父長制的イスラーム勢力の双方に対して、信仰
実践や女性の社会参加のあり方をめぐって異議を申し立てて、政治社会の
改革を主張する重要な存在である。今回の調査では、アンカラ、イスタンブ
ルという中心都市の運動とネットワーク化を進め、地方で改革運動の核とな
るべく活動を行う女性たちに対して、運動ネットワークのツテをたどって接触し
た。調査内容は、地方都市女性たちが中心都市の女性たちと、どのような問
題や問題意識を共有し、どのように組織やネットワークを形成したのか、地方
都市において女性たちが抱える問題にはどのような特性があるのか、運動が
女性自身の人生や家族・社会関係においてどのような意義を持ち、どのよう
な変化をもたらしていると当人が考えるのか、という点を中心に、半構造的イン
タビューを行った。
地方都市の訪問と調査は今回が初めてであったが、民族問題や部族
(アシレット)制、隣国からの亡命申請者など、地方都市がおかれた状況や、
そこで女性が直面している問題は社会経済的により発展した中心地域とは
かなり異なっていることが確認され、それが地方の復興女性運動に与える影
響についてより深く調査する必要があることが分かった点で意義深い現地調
査となった。その一方で、地方において、イスラーム系の女性運動は概して低
調であり、主要都市と連携し、主要都市の女性運動や外部(国連やEUな
ど)からの刺激・圧力が重要な動力源となっていることも明らかとなった。今回
の調査によって、復興女性運動の動態においてネットワークの発展とその影
響という視点から運動の総体を描くことの重要性や、今後、さらに地方・中心
両都市での調査を積みかさねていく必要性が分かった。