1.略歴

1982年3月 東京大学文学部I類宗教学宗教史学専門課程卒業
1982年4月 東京大学大学院人文科学研究科宗教学宗教史学専攻修士課程入学
1984年3月 東京大学大学院人文科学研究科宗教学宗教史学専攻修士課程修了
1984年4月 東京大学大学院人文科学研究科宗教学宗教史学専攻博士課程進学
1987年9月 ブリティッシュ・コロンビア大学アジア学科大学院博士課程
(カナダ・ヴァンクーバー)入学
1990年8月 東京大学大学院人文科学研究科宗教学宗教史学専攻博士課程退学
1990年8月 筑波大学地域研究研究科文部技官、哲学思想学系準研究員就任
1993年4月 筑波大学地域研究研究科(哲学思想学系)助手昇進
1994年5月 ブリティッシュ・コロンビア大学アジア学科大学院博士課程修了
1995年4月 東京大学大学院人文社会系大学院宗教学宗教史学研究室助教授転任

2.主な研究活動

a 専門分野

 中国古代宗教研究、祖先崇拝研究、死生観研究

 死者儀礼・祖先崇拝といわれる宗教現象を比較文化的視点から考察することを主たる目的とし、そのための基盤となる研究対象を中国古代に設定する。この問題関心は三層に分けることができ、まず、(A)古代中国の死ならびに死者(祖先)に対する観念と儀礼の背後にある宗教的宇宙観と救済論を明らかにし、(B)それを通して死ならびに死者にかかわる宗教現象の普遍的構造とメカニズムを理論化し、(C)更にそこから凡そ人間にとって死と死者が有する意味について、現代における状況を視野に含めて、考えることを目指している。

b 研究課題

 具体的な研究課題は以下のように区分できる。

 まず中国古代における祖先崇拝の研究(上記(A))にかかわる分野として

 (1) 中国の殷周春秋時代の宗教現象を出土文字資料(甲骨・金文)を用いて分析し、その意味を考える。

 (2) 戦国・秦・漢時代の出土文字資料(簡牘・帛書・鎮墓文・画像石)を用いて、殷周時代の祖先崇拝が戦国時代以降の死生観と他界観に変化していく様態を明らかにする。

 (3) 殷周~隋唐時代における祖先崇拝・死者儀礼・他界観を全体的な宗教的宇宙観の中に位置づけることにより、“死者であること(死者性)”の基本的な在り方と変化を把握する。

 (4) 儒家を中心とする諸典籍を資料として用い、殷周時代の祖先崇拝に内在していた世界観が「孝」として思想的に昇華され、それが中国の基本的価値観・人間観の一つとなったことを考察する。

 祖先崇拝の比較研究(上記(B))の分野として

 (5) 中国古代の祖先崇拝と「孝」思想の分析によって得られた洞察を出発点として、祖先崇拝という宗教現象を比較文化的視点から検討する視座を用意する。

 (6) 世界中の諸文化に現れる祖先崇拝を具体的に検討することによって、祖先崇拝の本質的意味と可変性を明らかにする比較研究を行う。

 死生観と死者性に関する研究(上記(C))として

 (7) 諸宗教の死に関する儀礼や考えが表明している人間観や価値観は何であるのかを抽象化し、比較研究を行った上で、

 (8) それを現代における死の状況や生命倫理と対照させ、現代の状況を客観的・批判的に捉える視座を用意する。

 この内、(1) (2) (4) (5)は従来からの問題関心であるが、2001年度発刊の著書の中で系統的に見解を述べることができ、かなりの成果を挙げえた。(3)はその問題関心から派生してきた課題であり、現在最も中心的な活動になっている。また、この期間の研究の進展に伴い、上記(7)(8)という研究課題が次第に関心の中心を占めるようになってきている。

c 主要研究業績

(1)著書

編著、アンヌ ブッシィ、「非業の死の記憶――大量の死者をめぐる表象のポリティックス――」、秋山書店、2010.3

(2)論文

「宗教学的生命倫理研究のための素描(私論) 下」、東京大学宗教学年報、2007、13-29頁、2008.3

「後漢時代の鎮墓文と道教の上章文の文書構成――『中国道教考古』の検討を中心に」、渡邉義浩編『両漢儒教の新研究』、汲古書院、342-427頁頁、2008.12

「中国における “死者性”の諸相と変遷――古代・中世の出土資料を中心に」、熊野純彦・下田正弘編『シリーズ死生学』第2巻、東京大学出版会、199~224頁、2008.12

「生命倫理と文化・伝統――儒教的生命倫理の構築の試みを通して――」、『死生学研究 特集号』(日中国際研究会議「東アジアの死生学へ」)、218~234頁、2009.3

「生命倫理と文化・伝統――儒教的生命倫理の構築の試みを通して――」、『死生学研究 特集号』(日中国際研究会議「東アジアの死生学へ」)、218~234頁、2009.3

「中国における生命倫理言説に見る宗教性――人間の尊厳と有徳の共同体」、宗教研究、361号、1-24頁、2009.9

(3)学会発表

「生命倫理与文化伝統――建抅構儒教生命倫理的尝試」、東京大学文学部COEプログラム・中華日本哲学会共催国際シンポジウム「中日“東亜生死学”国際学術研討会」、中国社会科学院、2008.2.19

「□□□墓文の文章構成―死者の排除から恩寵へ」、中国出土資料学会平成19年度第3回例会、東京大学、2008.3.15

「生命倫理という宗教性」、日本宗教学会第68回学術大会、京都大学、2009.9.13

「比較の視点から見た祖先崇拝と『孝』」、大東文化大学・成均館大学校・山東大学共催第2回東アジア三大学国際シンポジウム「東アジアにおける「家」――伝統文化と現代社会――」、大東文化大学、2009.9.16

「現代的宗教性としての生命倫理――中国の事例を題材に」、日台国際研究会議「東アジアの死生学へ」、台湾国立政治大学宗教学大学院、2009.10.30

(4)会議主催(チェア他)

「東京大学GCOE『死生学の展開』」・フランス国立極東学院・トゥールーズ大学社会人類学研究所共催公開シンポジウム「非業の死の記憶――追悼儀礼のポリティックス」・ワークショップ「死者の記憶と表象のポリティックス」、主催、東京大学文学部、2008.9.19~2008.9.20

「出土資料と漢字文化研究会主催シンポジウム「戦国秦漢出土文字資料と地域性――漢字文化圏の時空と構造」」、主催、日本女子大学、2009.9.19~2010.9.19

3.主な社会活動

(1)他機関での講義等

國學院大學非常勤講師、2004.4~

(2) 学会

「日本宗教学会」、役員・委員、理事、国際委員会委員長、2005.1~2008.9