沼野 充義


1.略歴
 1977年3月        東京大学教養学部教養学科学士
 1979年3月                    東京大学人文科学研究科(露語露文学専攻修士課程)修士
 1981年9月~1985年7月             ハーヴァード大学Harvard University(フルブライト全額給費奨学生として留学(スラヴ語スラヴ文学専攻博士課程)
 1984年6月                    ハーヴァード大学修士

 1985年3月                    東京大学人文科学研究科(露語露文学専攻博士課程)単位取得満期退学
 1984年2月~1985年6月 ハーヴァード大学、ティーチング・アシスタント
 1985年8月~1989年1月 東京大学教養学部、専任講師(ロシア語教室・教養学科ロシア分科)
 1987年 10月~1988年 9月 ワルシャワ大学東洋学研究所、客員講師(日本語日本文学)
 1989年1月~1994年3月 東京大学教養学部、助教授(ロシア語教室・教養学科表象文化論)
 1994年 4月~2004年3月 東京大学文学部、助教授(スラヴ語スラヴ文学)
 2000年 5月~11月    ロシア国立人文大学(モスクワ)、客員研究員(国際交流基金フェロー)
 2002年10月~11月    モスクワ大学アジア・アフリカ研究所、客員教授
 2004年4月        東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授、現在に至る

2.主な研究活動
 a 専門分野

  近現代ロシアおよびポーランド文学、現代日本文学を視野に入れた世界文学論、越境・亡命文学

b 研究課題

(概要) 興味と活動は近・現代文学全般にわたり、現代世界文学への比較文学的アプローチや現代日本文学の批評・時評も行なっているが、本来の専門領域はロシア文学およびポーランド文学(主として19~20世紀)である。1994年文学部に赴任して以来、スラヴ語スラヴ文学専修課程と並行して、西洋近代語近代文学専修課程の教育・運営に一貫して携わり、2007年4月に西洋近代語近代文学専修課程を改組した形で現代文芸論専修課程が創設されると、こちらに研究・教育の主軸を移しながらも、スラヴ語スラヴ文学の専修課程の研究・教育活動にも引き続き関わってきた。またモスクワ大学およびワルシャワ大学との大学間交流協定の実施担当者として、東京大学とこれらの大学との研究交流および学生交換の世話役を一貫して務めてきた。

日本とアメリカの優れた先達に学んだ厳密な文献学としてのスラヴ・フィロロジーを日本に根付かせ、発展させることに少しでも貢献したいと考えているが、昨今の風潮の中ではこれはなかなか厳しい戦いである。それと同時に、「世界文学」の視点からできるだけ幅広く現代文学を(日本文学の特殊性と普遍性も視野に入れて)とらえるように努めている。一国一言語の枠内に収まらないような、亡命・越境・二言語併用などの問題に特に関心がある。
 2008年4月からは現代文芸論研究室を中心とした科研費研究プロジェクト「グローバル化時代における文化的アイデンティティと新たな世界文学カノンの形成」の代表者として、現代の世界文学研究のための横断的な知のネットワークの構築に携わり、内外の研究者や文学者を積極的に招き、頻繁に講演会・セミナー・シンポジウムを開催してきた。
 ロシア東欧の専門分野における主要な関心の一つは、ソ連崩壊・東欧革命後の状況を文化史的にとらえることであり、その作業を通じて、因習的なロシア文学史の枠組みを変え、また文化の境界を見直す必要があることを主張してきた。またロシア文学における「詩的」なものの理論化を考えており、小説研究にこれまで偏ってきたため未発達な日本におけるロシア詩理解の基礎を固めるべく努めている。

海外(特にロシア東欧)と日本の文化・文学交流にも関心があり、国際交流基金や文化庁の様々な企画に協力し、ロシアや東欧の作家との交流や、日本文学の海外紹介といった事業にも積極的に参加している。最近では交流対象をアジアにも広げ、国際交流基金の委嘱をうけて、インドネシア(2005年)、ベトナム(2009年)両国各地の大学で連続講演・セミナーを行ない、その時にできた人的ネットワークも現在、研究・教育活動に活かしており、ロシア文学会において東アジアの研究ネットワーク構築を目指している。

具体的な進行中の研究課題としては、(1)新たな世界文学論へのアプローチ、(2)ポスト共産主義時代のロシア東欧文学の総合的研究、(3)ナボコフの著作のロシア語の文体論的研究(特に長篇『賜物』)、(4)チェーホフ短篇の現代的再解釈、(5)ロシア文学における日本人のイメージ/日本文学におけるロシア人のイメージの双方向的対照研究、(6)ロシア詩史の見直しと新しいロシア詩アンソロジーの編纂、などがある。

c 研究業績
 (1) 著書
共著、宇山智彦(編)、他計11名、「講座スラブ・ユーラシア学2 地域認識論―多民族空間の構造と表象」、講談社、2008.2

共著、「ラヴレターを読む 愛の領分」、大修館書店、2008.12

編著、「芸術は何を超えていくのか?」、東信堂、2009.3
 (2) 論文

「中欧文学と地域アイデンティティ―現代文学を通じての<中(東)欧意識>再検討の試み」、科学研究費研究成果報告書、『越境する文学の総合的研究』32-51頁、2008.3

「新しい世界文学の場所へ-大きな楊文学についての小さな論」、文学界、62-9、2008.9

「Toward a New Age of World Literature: The Boundary of Contemporary Japanese Literature and Its Shift in the Global Context」、れにくさ、1、2009.3

「レーリッヒの美術」、演劇博物館グローバルCOE紀要 演劇映像学2007報告集、1、2009.4

「枠を変える Mission Two: 世界に向き合うために」、比較地域大国論集、1、2009.5
(3)書評
「ヤン・パトチカ(石川達夫訳)『歴史哲学についての異端的論考』」、みすず書房、2007、その他、『毎日新聞』、2008.1.20

「小野正弘(編)『日本語オノマトペ辞典』」、小学館、2007.10、『毎日新聞』、2008.3.2

「トルーマン・カポーティ(村上春樹訳)『ティファニーで朝食を』」、新潮社、2008.2、『毎日新聞』、2008.3.30

「桐野夏生『東京島』」、新潮社、2008.5、『毎日新聞』、2008.6.8

「平野啓一郎『決壊』」、新潮社、2008.6、『毎日新聞』、2008.7.13

「川村湊『文芸時評 1993-2007』」、水声社、2008.7、『毎日新聞』、2008.8.17

「細川周平『遠きにありて思うもの―日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』」、みすず書房、2008.6、『毎日新聞』、2008.9.28

「高野陽太郎『「集団主義』という錯覚」、新曜社、2008.6、『毎日新聞』、2008.10.26

「高野文緒『赤い星』」、ハヤカワ書房、2008.8、『毎日新聞』、2008.11.16

「今福龍太『群島―世界論』」、岩波書店、2008.11、『毎日新聞』、2009.1.11

「エステルハージ・ペーテル『ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし』」、松籟社、2008.11、『毎日新聞』、2009.2.15

「竹内整一『日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか』、筑摩書房、2009.1、『毎日新聞』、2009.3.15

「津島佑子『電気馬』」、新潮社、2009.3、『毎日新聞』、2009.4.19

「鹿島田真希『ゼロの王国』」、講談社、2009.4、『毎日新聞』、2008.5.24

「村上春樹『1Q84』Book1, 2」、新潮社、2009.5、『毎日新聞』、2008.6.14

「辻原登『許されざる者』」、毎日新聞社、2009.6、『毎日新聞』、2009.7.12

「加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』」、2009.7、朝日出版社、『毎日新聞』、2009.8.16

「オーウェル(高橋和久訳)『一九八四年』」、早川書房、2009.7、『毎日新聞』、2008.9.13

「キシュ(山崎佳代子訳)『庭、灰』他」、河出書房新社、2009.9、『毎日新聞』、2009.10.25

(4)総説・総合報告

「日本で研究する外国文学」、東京大学国際化白書(本編)、34-35頁、2009.3

(5)監修

「吉田忠正『世界の国ぐに35 ロシア』、ポプラ社、2009.3

(6)解説

井坂幸太郎の「精度」について、『井坂幸太郎『死神の精度』(文春文庫)』、338-345頁、2008.2

二つの「地獄」の間で、『リービ英雄『千々にくだけて』(講談社文庫)』、268-276頁、2008.9

原点にして究極―フレーブニコフに至る(帰る)長い道、『亀山郁夫『甦るフレーブニコフ』(平凡社ライブラリー)』、627-653頁、2009.4

(7)啓蒙

「現代ロシア美術紀行 地下活動から自由の謳歌を経て、また新たな受難の時代に?」、一般雑誌、『AVANTGARDE』、Vol.4、70-73頁、2008.1

「現代文芸論のフロンティア1 薄餅とクレープはどちらが美味しいか? ―翻訳について」、一般雑誌、『UP』、2008年2月号、22-28頁、2008.2

「現代文芸論のフロンティア2 ゲーテの家の庭は意外に小さかった -世界文学について」、一般雑誌、『UP』、2008年3月号、40-46頁、2008.3

「現代文芸論のフロンティア3 加計呂麻島とロシア正教と特攻艇 -日本文学について 」、一般雑誌、『UP』、2008年4月号、26-31頁、2008.4

「「私」に内蔵された、宇宙と交信するアンテナ(谷川俊太郎論)」、一般雑誌、『現代詩手帖』、51-4 (2008年4月号)、89-91頁、2008.4

「『チェブラーシカ』ソ連的用語集」、一般雑誌、『熱風』、2008年7月号、27-34頁、2008.7

「エステルハージ・ペーテル」、一般雑誌、『神奈川大学評論』、第62号、158-161頁、2009.3

「未発見の大陸か、未来のワンダーランドか」、一般雑誌、『群像』、2009年5月号、360-371頁、2009.5

(7)学会発表

「Toward a New Age of World Literature: The Boundary of Contemporary Japanese Literature and Its Shifts in the Global Context」、Language, Literature, Culture, Identity (organized by Belgrade University)、Sava Congress Center, Belgrade、2008.9.12

「宇宙から呼びかける二羽のカモメ-現代日本小説におけるロシア人のイメージ」、国際日本文化研究センター平成20年度海外研究交流シンポジウム「ロシア極東文化の中の日本」、ウラジオストク極東大学、2008.9.26

「美女と醜女、または翻訳可能性と不可能性の間で」、ワークショップ「ロシア文学にとって翻訳とは何か? -理論・実践・受容」、中京大学(日本ロシア文学会全国大会)、2008.10.11

「中心・周縁・中間-スラヴ地域研究の活性化に向けて」、地域研究コンソーシアム「人文学的アプローチによるポーランド地域主義研究-文学・芸術・言語を通して考えるポーランドの周辺地域」、東京大学文学部、2009.1.10

「エステルハージと中欧文学の「地詩学」-ドナウを下って、世界文学の未来へ」、大阪大学グローバルCOE「コンフリクトの人文学」国際研究教育拠点主催シンポジウム「中欧の詩学」、大阪大学豊中キャンパス、2009.2.8

「芸術は何を超えていく(超えていかない)のか?」、日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト研究事業シンポジウム「芸術は誰のものか?」、KOKUYO ホール、2009.3.7

 (8)会議主催(チェア他)

「2009年度国際交流基金賞受賞者記念講演会 ボリス・アクーニン『日本と私』、チェア、東京大学文学部1番大教室、2009.10.9

 (9)教科書

「文学の愉しみ」、柴田元幸・野崎歓、日本放送出版協会、2008.3


3.主な社会活動
(1) 他機関での講義等
朝日カルチャーセンター(横浜)非常勤講師、2008.2~ (不定期)

北海道大学スラブ研究センター、特別講義、2009.5
ハノイ大学、フエ大学、ダナン大学、ホーチミン大学その他、国際交流基金「日本文学巡回セミナー」派遣講師、2009.9.15~9.29

イェール大学、特別講演(東大―イェール・イニシャティヴ)、”Haruki vs. Karamazov: Contemporary Japanese Literature under the Shadow of the Great Russian Literature”、2009.12.8

ユーラシア研究所、創立20周年記念講演「光源氏 vs. カラマーゾフ――ロシアと日本 文学が映し出す互いの姿」2009.12.12

(2) 行政

「文化庁」、JLPP現代日本文学翻訳作品選定委員、2007~

「東京都文京区」、文の京文芸賞選考委員、2008.4~~
「文化庁」、芸術選奨(文学部門)の推薦委員、芸術選奨推薦委員、2009.10~

(3)学会

「日本ナボコフ協会」、運営委員、1998~

「日本スラヴ東欧研究学会(JSSEES)」、理事、1998~

「ロシア・東欧学会」、理事、2000~

「日本西スラヴ学研究会」、企画編集委員2000~、事務局長2005~2009

「日本ロシア文学会」、会長、2009.10~

「日本ロシア文学会」、日本ロシア文学会賞選考委員長、2009.10~

(4) 学外組織(学協会、省庁を除く)委員・役員

「毎日新聞社」、書評委員、1995.4~

「セゾン文化財団」、評議員、1999~

「国際交流基金」、Japanese Book News編集委員、2004.10.1~

「新聞三社連合(東京新聞・中日新聞他)」、文芸時評担当者、2005.1~

「読売新聞社」、読売文学賞選考委員、2005~

「日本ペンクラブ」、国際委員、2006~

「東京大学出版会」、企画委員、2007.4~

「早稲田大学」、坪内逍遥大賞選考委員、2007.4~

「北海道大学スラブ研究センター」、運営委員、2008.4~

「光文社」、感想文コンクール審査委員、2008.7~