2011年度第1回研究会

2011(平成23)年度第1回研究会(科研第5回研究会)

本科研の第5回(2011年度第1回)研究会は、2011年7月9日に東京大学(本郷キャンパス)東洋文化研究所第2会議室で開催され、研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者合わせて13名が参加した。

まず研究代表者の深沢克己より、本年度予算の執行計画と研究組織体制について説明があり、本年度より踊共二・藤崎衛の2名をメンバーに加えることなどが了承された。続いて本年度開催予定の国際ワークショップについて準備状況が説明され、検討事項が提起された。今回のワークショップには、海外から3名を招聘することが決定された。招聘予定者と報告テーマは以下のとおりである。

- ピラル・ヒメネス・サンチェス(トゥルーズ大学、南フランス・スペイン研究所)「カタリ派の歴史的文脈 ―なぜ『善信者たち』は南フランスで支持されたのか?」

- アラン・タロン(パリ=ソルボンヌ大学)「16世紀の宗派間越境 ―イタリア異端審問にみるフランス人の事例」

- エリク・シュイール(ボルドー第三大学)「17世紀フランス南西部の宗教書出版―宗派間対立の媒体か?」

以上に加えて、科研メンバーから2名の報告者を出すことが確認され、うち1名は研究協力者の山本大丙とすることが確認された。

続いて本年度第2回研究会を合宿形態でおこない、合宿候補地として高野山金剛峯寺を計画し、真言密教について勉強する機会とすることが了承された。この目的から、東京大学文学部教授・下田正弘氏に指導と協力を依頼中であることが報告された。

さらに2012年度に開催予定の最終シンポジウムについて概要が提案され、2日計画で準備すること、また原則として国内で開催することが承認された。

最後にシンポジウム終了後の出版計画についても討議され、国内出版ではなく、欧文による海外出版を目標とすることが確認され、代表者による基調報告を終了した。

基調報告に続いて、ワークショップ報告予定者である山本大丙が、「『愛の家』―カトリックでもプロテスタントでもない宗教組織」のタイトルで中間報告をおこない、1540年頃にヘンドリク・ニクラースが創立した「愛の家」に関する研究史を紹介したのち、この宗教秘密結社の成立・発展・活動・思想・人物誌を分析し、それが人文主義者たちのあいだに呼びさました共感について論じた。

また新規メンバーである踊共二は、「近世スイスのカトリックとプロテスタント―相剋と融和のイコノロジー」と題する研究報告をおこない、第一次カッペル戦争が1529年6月に和平に至った際、両軍の兵士がミルクスープを共食したという故事に基づく「カッペルのミルクスープ」の図像が、カトリック・プロテスタント両宗派共存・和解の象徴として、スイスの思想伝統の内部に定着していく過程を論じた。

いずれの報告も近世ヨーロッパにおける宗派間関係を、単純な対立図式で解釈することに対する批判的観点を提示し、参加者のあいだに活発な議論を喚起した。

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