19  南欧語南欧文学

 教授 長神 悟  NAGAMI, Satoru

1.略歴
 1974年 3月  東京大学文学部言語学専修課程卒業
 1977年 3月  東京大学大学院人文科学研究科言語学専門課程修士課程修了
 1977年 4月  東京大学大学院人文科学研究科言語学専門課程博士課程 ~'79年3月
 1977年11月  ピサ高等師範学校留学(イタリア政府給費留学生) ~'78年10月
 1978年11月  フィレンツェ大学文学部留学 ~'79年3月
 1979年 4月  東京大学文学部助手
 1983年 4月  成城大学文芸学部専任講師
 1990年 4月  成城大学文芸学部助教授
 1991年 4月  東京大学文学部助教授(イタリア語イタリア文学)
 1995年 4月  東京大学大学院人文社会系研究科助教授(南欧語南欧文学)
 1996年 4月  東京大学大学院人文社会系研究科教授(南欧語南欧文学)

2.研究活動
 a 専門分野:イタリア語学、ロマンス語学
 b 研究課題
   概 要
   1) イタリア語史上の諸問題の解明を目指す。近年はことに語形成や語源学・語彙史の分野に関心を寄せている。また、大学院の演習などを通じ、イタリア語史上重要な「言語問題」(Questione della lingua)を歴史的に跡づける作業を行なっている。
   2) ロマンス語学の観点からイタリア語の特質を検討する。
   自己評価
   上の1)で触れた「言語問題」に関して近年、大学院の演習において、イタリアで出版された最古のイタリア語文典であるG. F.フォルトゥニオの"Regole Grammaticali della volgar lingua"(Ancona, 1516)、またその9年後に刊行され、"Regole"よりはるかに大きな反響を呼んだP. ベンボの主著"Prose della volgar lingua"(Venezia, 1525)を取り上げ、さらに2007年度からはP.ジャンプッラーリ(1495-1555)の著作を講読しているが、今後もしばらく16世紀前半のイタリアの言語論争について検討を進め、この分野に関する理解を深めたい。
 c 主要業績
 (1) 論文
「Italianismi in giapponese - Nipponismi in italiano」、Atti del XXXIX Congresso Internazionale di Studi della Societa' di Linguistica Italiana、pp.117-156、2006.10
 (2) 総説・総合報告
「Centro Studi e Ricerche dell'Universita' di Tokyo in Firenze: Attivita' 1999-2006」、学術論文誌、『Cultura Italo-Giapponese. Annali del Centro Studi e Ricerche dell'Universita' di Tokyo in Firenze』vol.3, anno 2006、pp.79-95、2006.7
 (3) 会議主催、チェア他(会議運営に関する貢献で、発表を伴わないもの)
「イタリア学会第54回大会」、主催、2006.10.21、静岡文化芸術大学(浜松市)
「Enanuele Banfi 教授講演会」、主催、2007.4.21、東京大学文学部南欧文学研究室
 (4) 監修
「Cultura Italo-Giapponese. Annali del Centro Studi e Ricerche dell'Universita' di Tokyo in Firenze, vol.2, anno 2005」Firenze, Franco Cesati Editore、2006.2
「Cultura Italo-Giapponese. Annali del Centro Studi e Ricerche dell'Universita' di Tokyo in Firenze, vol.3, anno 2006」 Firenze, Franco Cesati Editore、2006.7
 (5) 解説
「Tullio De Mauro:Dizionari tra teorie e pratica」、解説学術論文誌『イタリア学会誌』第56号、pp.14-15、2006.10

3.主な社会活動
 (1) 学会 「イタリア学会」、役員・委員、会長、2006.4~
「日本ロマンス語学会」、役員・委員、副会長、2007.5~



 准教授 浦 一章  URA, Kazuaki

1.略歴
 1982年3月    東京大学教養学部教養学科イギリス科卒業
 1984年3月    同   文学部イタリア語イタリア文学専修課程卒業
 1987年3月    東京大学大学院人文科学研究科フランス語フランス文学専門課程(イタリア語イタリア文学専攻)修士課程修了
 1987年4月    東京大学大学院人文科学研究科フランス語フランス文学専門課程(イタリア語イタリア文学専攻)博士課程進学
 1988年3月    東京大学大学院人文科学研究科フランス語フランス文学専門課程(イタリア語イタリア文学専攻)博士課程中途退学
 1988年4月    東京芸術大学音楽学部一般学科専任講師
 1990年4月    同             助教授
 1994年4月    東京大学文学部南欧語南欧文学科助教授
 1995年4月    同   大学院人文社会系研究科助教授、現在に至る。

2.主な研究活動(2006~2007年)
 a 専門分野:(ダンテを中心とした)イタリア文学、中世オック語文学
 b 研究課題
   概要:『ダンテ研究 I』(東京、東信堂、1994年)以降も、『神曲』以前のダンテ、恋愛詩人としてのダンテを研究の中心に据え、1230年頃からホーエンシュタウヘン家の宮廷で花開いたシチリア派の詩人たちや、それに続くシチリア・トスカーナ派の詩人たちについての知識を深め、さらには南仏トゥルバドゥールたちの詩に対する理解を深めること。ダンテは少なくとも8名のトゥルバドールに言及しており、そのうちアルナウト・ダニエルを「煉獄篇」第26歌に登場させるに際しては、わざわざオック語で語らせるという念の入りようである。そのため、ダンテとトゥルバドールとの関係に対する興味が現在では次第に大きくなりつつある。また、恋愛詩の伝統はペトラルカをへて、時と地域、個性の壁を超越した一種の文学的コイネーを形成してゆくため、ダンテ以降の恋愛詩をも視野に含めるよう努め、ダンテの受容史という観点から、その最初の崇拝者ともいうべきボッカチョにも関心を寄せている。
   自己評価:『神曲』とも対照させながら、『ヰタ・ノワ』に収録された韻文のスタイルの変化を跡づけることが現在の主要な課題であるが、文体を問題とする困難な研究は少しずつ前進を続けている。2001年「日本におけるイタリア年」に企画されたルネサンス国際シンポジウムの折の報告を発展させ、イタリア学会第50回大会(2002年10月26日、神戸女学院大学)において「ダンテにおけるジャコモ・ダ・レンティーニ」の発表を行なったが、それはイタリア学会第55回大会(2007年10月20日東京大学大学教養学部)発表へと発展している。現在は「句跨り」(enjambement)に関する統計的な調査を展開中である。また、2004年はペトラルカの生誕700周年にあたったが、ペトラルカの文体に関する論考も刊行された。現在、効果的な文学史教育を模索中であるが、必要な講義資料の整備も完了しつつあり、ある程度ルーティーン化することに成功した。すでに中世オック語入門に関してはルーティーン化が完了したといってよい状況だが、入門を終えた後の教育体制はまだ改善の余地がある。
 c 主要業績
 (1) 著書
共訳、カタロニア語、Pau Marques; Kazuaki Ura、「Seixanta-un haikus per a les quatre estacions: antologia bilingue de poesia japonesa」、L'Aljamia、2006.10
単著、「『イタリア語のスタートライン』」、三修社、2007.3
 (2) 論文
「Petrarca e la sestina」、Journal of the Faculty of the Letters. The University of Tokyo. Aesthetics.、29/30、pp.95-112、2006.3
「ペトラルカとセスティーナ」、『イタリア語イタリア文学』(東京大学人文社会系研究科南欧文学研究室紀要)、3、31-71頁、2006.7
「帰国後のファルサーリ──その活動のひとつの記録」、『美術史論叢』(東京大学大学院人文社会系研究科美術史研究室紀要)、23、84-88頁、2007.3
 (3) 教科書
『イタリア語のスタートライン』、三修社、2007
 (4) 解説
「ダンテとルネサンス」、一般図書『哲学の歴史』43、頁59-60、2007.5
 (5) 学会発表
「ダンテにおけるウェルギリウス受容」、日本英文学会第79回大会,第10部門「中世ヨーロッパ文学の創成と継承」、慶応大学三田校舎,西校舎527教室、2007.5.20
「3 fonti di Giacomo da Lentini: Andrea Capellanus, Jaufre Rudel e leggenda tristaniana」、第55回イタリア学会、東京大学、教養学部(駒場)、2007.10.20

3.主な社会活動
 (1) 他機関での講義等
イタリア文化会館特別講演、2006.12
 (2) 学会
「イタリア学会」、その他、投稿論文査読委員、2006~




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