29 言語動態学
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 1.研究室の活動等の概要
(1) 研究分野の概要
 言語動態学は,大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻の中に,2004年4月に新設された専門分野である。
 本専門分野では,各教員の研究成果と専門知識,現地調査で培った国際経験を最大限に活用した多面的な授業と研究指導が行われる。本研究室所属の教員の専門とする地域は外国‐オーストラリア(角田),北ヨーロッパ・ロシア(松村),中南米(中村)‐であるが,各教員とも,現在の研究テーマ‐オーストラリア原住民語,言語類型論(角田),ウラル諸語,少数言語の言語資料の電子化(松村),文字や図など認知的人工物の研究,途上国の社会開発(中村)‐をふまえつつ,多言語社会における言語的少数者のあり方の問題への関心,収集・蓄積した言語資料をコミュニティーと共有して活用するしくみの確立の重要性の認識,フィールド・サイエンス型の研究方法の重視など,基本的な考え方を共有し,地域的に偏らない研究が可能な環境を作り上げている。
(2) 大学院の専攻・コースとしての活動
 現在の教員は,教授2名,准教授1名,助手1名である。この他に,専任教員がカバーしきれない分野の講義を,他大学から招いた非常勤講師にお願いしている。
 2006年度は修士課程7名、博士課程3名、2007年度は修士課程9名、博士課程6名が在籍している。
(3) 研究室としての活動
 本研究室は,その前身の東洋言語研究室(1994.4~2004.3)の時代から,世界の危機言語(endangered languages; 話者が急速に減少し,1~2世代で消滅する恐れのある言語)に関するデータベースを,研究室の Webサーバーで公開しており,それがこの研究室の特色の1つとなっている。
 研究室ホームページには,
 (a) 危機言語レッドブック(アフリカ,ヨーロッパ,ロシア・シベリア,アジア,南アメリカの危機言語に関するデータ集)
 (b) ロシアの少数言語文献ガイド(ロシアの話し手が5万人以下の言語に関する文献案内)
 (c) 危機言語文献リスト(危機言語に関する研究文献の網羅的リスト)
 という3つの「危機言語」「少数言語」関連のデータベースが置かれている。
 (「危機言語のホームページ」http://www.tooyoo.l.u-tokyo.ac.jp/ichel/ichel.html
(4) 国際交流の状況
 教員は,科研費等の研究助成をうけてオーストラリア,ロシア,エストニア,フィンランド,グアテマラ,ボリビア,中国等の研究者と継続的な研究交流を行い,合同で現地調査、研究集会,講演会などを開催している。

 2.構成員・専門分野
 (1) 専任教員
  教授:角田太作 オーストラリア原住民語、統語論、言語類型論、危機言語の諸問題
  教授:松村一登 ウラル諸語、とりわけバルト・フィン諸語とマリ語
  准教授:中村雄祐 途上国の社会開発、認知科学

 (2) 2006~2007年度の助教の活動
 畑野 智栄
  在職期間  2004年4月1日~2008年3月31日
  研究領域  心理学(音声言語認知,韻律)
  主要業績  Hatano, T., Nishida, M., Horiuchi, Y., & Ichikawa, A.(2004)“The Cognitive Unit of Segmentation for Speech in Japanese”,In Proc. The 18th International Congress on Acoustics (ICA2004).
        科学研究費補助金 若手研究(B) 研究代表者
       「音声の実時間認知処理におけるプロソディの活用」2005年4月~~2008年3月


 3.卒業論文等題目
 (1) 修士論文題目
  小野綾子「熊本県球磨方言の研究」
  <指導教員>角田太作
  森本裕子 “How do Pictures Work in Text? A Case Study Analyzing the Illustrations in Webster's Third New International Dictionary”(画像表現の有効性:ウェブスター国際英語大辞典の挿絵分析)
  <指導教員>中村雄祐

  2007年度
  歌田 英「言語における法と領域 ~ カナダの言語政策を中心とする考察 ~」
  <指導教員>中村雄祐
  大塚行誠「ティディム・チン語の基礎的研究」
  <指導教員>角田太作
  中田有美「エストニア語の関係代名詞kesの先行詞の指示対象について ― コーパスにもとづく研究 ―」
  <指導教員>松村一登
  野沢尊信「群馬県伊勢崎市における日系南米人の定住化」
  <指導教員>角田太作
  藤山裕子「コミュニケーション能力と創造性の関連」
  <指導教員>中村雄祐

 (2) 博士論文題目
  なし




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