研究のフィールドは、西欧近世哲学ならびに現代フランス哲学。様々な意匠をとって現れる根拠への拘束から離脱し、存在の多様な声に開かれた<内在性の哲学>を独自に体系化する作業を進めつつある。
当面の作業として具体的には、(1)西洋形而上学の形成史を背景とする、ドゥンス・スコトゥスからスピノザに至る中世後期から近世にかけての哲学史を素材とした、超越なき<内在性の哲学>を可能にする<存在の一義性>の系譜学の跡付け、(2)現代における<内在性の哲学>の範型=差異哲学としてのドゥルーズ哲学の解凍とその展開、さらに、(3)<内在性の哲学>を開かれた場において提示することを目指して、分析的形而上学の議論や日本(語)の哲学との突き合わせ、を進めている。 さらに、<内在性の哲学>のより具体的な展開として、抽象的な人間の本質なるものを措定し、そのようにして措定された人間を中心にして思考することを拒否する思考、人間が産出された結果=効果に過ぎないということを反転させて、結果=効果としての人間を人間という閉じられた枠組みの中に閉じ込めるのではなく、一つの結果=効果であるからには、限定された存在のありようとしての人間とは異なる他のありようへと変容していくことの可能性を肯定する思考としての非人間主義(inhumanisme)の哲学の構想を練っている。
講義では、以上の研究の成果を主たる素材としながら新たな哲学史像を提示すること、演習では、デカルトやドゥルーズの古典的テクストの精読を通して哲学のテクストを読解する技法を教授すること、をそれぞれ目指している。
「直観・思惟・意識――デカルトにおける<私>のあり方――」
『論集』8,東京大学文学部哲学研究室,1989年,pp. 146-159.
「「魂は常に思惟する」――デカルトの思惟実体についての一考察――」
『哲学』第41号,日本哲学会編,1991年,pp. 102-112.
「無限性から必然的実在へ――デカルトにおける神の実在証明――」
『デカルト読本』湯川・小林編,法政大学出版局,1998年,pp. 68-79.
「雀斑と倒錯――ドゥルーズの最初期思想瞥見――」
『紀要』第29号,神戸大学文学部,2002年,pp. 19-64.
「ドゥルーズ哲学の生成:1945-1969」
『現代思想』「ドゥルーズの哲学」第30巻第10号,青土社,2002年,pp. 125-147.
「哲学と社会学の幸福な闘争――タルドという奇跡についての一考察――」
『社会学雑誌』第20号,神戸大学社会学研究会,2003年,pp. 95-110.
「スピノザ哲学と『形而上学的思想』」
『スピノザーナ』第五号,スピノザ協会編,2004年,pp. 5-24.
「存在の響きとしてのかすかな知覚――マルブランシュにおける真理の場と超越の形象――」
『真理の探究』知泉書館,2005年,pp. 61-91.
「スピノザと中世スコラ哲学――(自己)原因概念を中心に――」
『中世思想研究』XLVII,中世哲学会編,2005年,pp. 166-177.
「現代フランス哲学における超越論的経験(論)」
『現代の哲学:西洋哲学史2600年の視野より』哲学史研究会編,昭和堂,2005年,pp. 238-266.
「形而上学を再インストールする――フレデリク・ネフ「形而上学とは何か」に寄せて――」
『本別冊 RATIO』01号,講談社,2006年,pp. 282-301
「「私たちは自らが永遠であることを感得し、経験する」――スピノザにおける内在性の哲学の論理と倫理の一断面――」
『哲学を享受する』東洋大学哲学講座4,知泉書館,2006年,pp.181-206.
「マルブランシュ」
『哲学の歴史 第5巻 デカルト革命 【17世紀】』責任編集 小林道夫,中央公論新社,2007年,pp. 459-505.
「ドゥルーズ/ガタリ研究・活用の現在」・「後書きに代えて」
『ドゥルーズ/ガタリの現在』小泉義之・鈴木泉・檜垣立哉編,平凡社,2008年,pp. 698-717
「力能と「事象性の度合い」――スピノザ『デカルトの哲学原理』第一部定理7に関する覚書」
『論集』26,東京大学大学院人文社会系研究科・文学部哲学研究室,2008年,pp. 74-90.
「ドゥルーズ」
『哲学の歴史 第12巻 実存・構造・他者 【20世紀III】』責任編集 鷲田清一,中央公論新社,2008年,pp. 613-662.
「「形而上学」の死と再生――近代形而上学の成立とその遺産――」
『岩波講座哲学 02 形而上学の現在』岩波書店,2008年,pp. 49-73.
「スティルとリトルネロ――メルロ=ポンティとドゥルーズ」
『思想』2008年第11号,岩波書店,pp. 256-274.
「リトルネロ/リフの哲学 ドゥルーズ&ガタリの音楽論に寄せて」
『現代思想』「ドゥルーズ」第36巻第15号,青土社,2008年,pp. 194-203.