文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

木下 直之教授(文化資源学研究室)

第1の答え

動物園! 動物園に行ったら、動物ばかりでなく動物園も見る。ついでに人間も見る。なんで俺たちだけが服を着ているんだろう、というようなことも考える。馬を見ると、ついツーショットを撮ってしまう。

『月刊みんぱく』4月号(国立民族学博物館)に、「動物園に動物園を見に行く」というエッセイを書いたばかりだ。そこでは、台湾の新竹という町にある小さな動物園を紹介した。1936年、日本統治下での開園。驚くべきことに当時の正門や飼育ケージがまだ使われており、「動物園文化資産Culture Resource of Hsinchu Zoo」というプレートが掛かっていた。私が所属する文化資源学研究室で、文化施設を論じて、美術館や博物館、劇場や音楽ホールばかりを問題にするのは問題、と考えてきただけに、我が意を得た思い。

同じことを富山でも思った。富山ファミリーパークはもはや動物園を名乗らない動物園。はじめて訪れた日には、園内でそば打ち教室が開かれていた。野生動物ばかりでなく、家畜や家禽にも目を向ける。日本中のニワトリを集めたケージには「ニワトリは文化遺産」と記され、われわれはそれをどうやって食べてきたのかという鳥料理の説明もある。そこは、人間と動物の関係を考える場所となっている。動物園の未来を考えさせられた。

9月9日に「国立動物園を考える」というフォーラムが東京大学で開かれる。生きた動物を囲って飼育し展示するという手間ばかりかかるなんとも厄介で奇妙な施設を、なぜこれほどたくさんつくってきたのか(日本にはおよそ100の動物園がある)、どんなふうにつくってきたのか、これからどうするつもりか、このままだといずれなくなってしまう、それでもいいのか、というような問題を語ろうと思う。

 

第2の答え

どうやって伝えるかだって? まずは現場に連れて行く。ついて来なけりゃ、置いて行く。

 

主要著書: 『美術という見世物』(平凡社、ちくま学芸文庫、講談社学術文庫、1993)
  『わたしの城下町』(筑摩書房、2007)
  『股間若衆』(新潮社、2012)

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