文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

赤川 学准教授(社会学研究室)

第1の答え

私のライフワークは、性に対する感じ方や考え方が、人によって異なるだけでなく、歴史的に変化していくさまを記述し、その社会的要因を探ることです。

特に注目しているのは、明治以降、文明開化の名のもとに西洋の医学書、性科学書が大量に日本に輸入され、日本人の性に対する考え方を大きく変えたことです。ずいぶん前に『セクシュアリティの歴史社会学』という本を出版してその概要をまとめました。ここ数ヶ月はその続編として、1875(明治8)年に刊行されたベストセラー、『造化機論』を翻訳出版した千葉繁という人物に注目しています。

千葉繁の来歴はこれまでほとんどわかっていなかったのですが、ひょんなことから、浜松井上藩の藩士で、明治維新以降、神奈川県庁に訳官(通訳ないし翻訳者)として勤めたことまで判明しました。しばらくこの作業をさらに継続して、幕末を生きた謎の性科学者の人生の全体像に迫ってみたいと思っています。

 

第2の答え

 私は社会学者なので、ふだんは社会調査の方法論に基づいて研究していまして、歴史的研究を学生と共有できる機会はほとんどありません。ただ、どんな学問であれ、史料や資料に基づいて、ある事柄について推理を働かせ、さらに調べを進めていく作業は共通しています。その作業は、寝食を忘れるほど楽しいもので、一生を賭けて悔いがないと思えるプロジェクトも多くあります。その楽しさに目覚めていただくことが教員の務めだと考えています。そのためには、自分がいま面白いと思っていることを、ゼミの場や実習の場で学生にも伝え、その様子をリアルタイムで観察していただくことが重要だと思っています。また加齢とともに頭が硬くなってくるので、学生さんがどんなことにリアリティを感じて、何を面白がろうとしているのかを大事にして---それを本人がわかっていない場合もあるのですが---、私自身も、彼らから学ばせてもらうつもりで接したいと思っています(いつもうまくいくとは限りませんが)。

 


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