文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

古井戸 秀夫教授(文化資源学研究室)

第1の答え

今、二つのことに夢中になっています。ひとつは、鶴屋南北の評伝を書くことです。書き始めて丸三年になりました。あと二年と少しはかかりそうです。長い作品になりそうです。細かい字の資料をひっくり返して読んでは、書いています。進んだ老眼には厳しい、毎日です。最後までたどり着くか不安でしたが、このごろは書き終わるのが寂しく思われるようになりました。不思議ですね。

もうひとつ、夢中になっているのは、舞踊台本です。日本舞踊の花柳流の宗家、四世花柳寿輔さんに勧められてはじめました。原作は、昭和十五年に花柳舞踊研究会で上演された『菅原草紙』です。渥美清太郎の作なので、たいへん面白くできています。ただ、その面白さが現在の観客にそのまま伝わるかどうか、そこが問題です。こちらは、国立劇場の舞踊公演として、2012年5月25日(金)26日(土)に上演される予定です。楽しい仕事なので、終わるのが寂しく思うようになりました。

 

第2の答え

文化資源学の大学院では、文字資料学と形態資料学、二つの演習を担当しています。文字資料学は日本の古典で、歌舞伎の文献を講読しています。形態資料学は近現代の演劇舞踊で、文献を読むとともに、演劇や舞踊の表現技法についても、考えてみるように心がけています。小説や詩歌を書く作家でもなければ、劇作や舞踊台本を書く専門家でもありません。残された文献を丹念に読んでは考えること、そのことだけに取り組むようにしてきました。

学部生向けの講義では、「日本演劇の歴史」と「歌舞伎を読む」、この2科目を担当しています。ここでは少し踏み外して、自分勝手な考えを自由に述べさせてもらっています。来年の暮れには、舞踊学会の大会を引き受けました。テーマは、「宝塚―ピアノで踊る日本舞踊」です。渡辺裕さん、木下直之さんら、文化資源学の研究室の仲間とともに、和洋折衷の文化について考えることができれば、嬉しいです。

 

主要著書: 『歌舞伎―問いかけの文学』(1998年、ぺりかん社)
主要編著: 『歌舞伎登場人物事典』(2006年、白水社)

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