文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

近藤 和彦教授(西洋史学研究室)

第1の答え

読んだり書いたりするのに夢中です。話すのよりずっと好きです。

読むのは文字だったり、絵画だったり、街並みだったり、‥‥ひとの心だったり。

ですから、紙などアナログ物も、オンラインなどデジタル物も、ナマモノもありますが、とにかく、ただちには読み切れない意味を解読してゆく過程が楽しいですね。

過去のことを想像し、未来のことを忘れない(Imagine the past, and remember the future)と言いますが、読むのはそのためです。汝自身を知れ(Read thyself)とも言いますね。究極はこれかもしれない。

 

第2の答え

大学教師なら、「講義や演習で」というのが模範回答でしょうか。

それがあまり得意ではない。不完全な授業ばかりで反省しきりです。丁々発止のパフォーマンスもできません。

旧説の誤りを根拠を示しつつ述べ、力強く自説の正しさを説いているらしい先生方がうらやましい。そもそも攻撃型でなく、win-win 派です。旧説のとなえられた時代の問題情況とか、いろいろ読んでゆくと、それなりの理はあったわけで、置かれた時代や立場のうつろいを考えると、自説に合理性があるとしてもそれは一定の条件下のことだな、と思ってしまう。ニュートンやスミスの学説を2011年の物理学や経済学でやっつけるよりも、18世紀の世界にこちらからタイムスリップしていって読み、学ぶほうが生産的なんじゃないか、と考えています。

授業に向かう直前にそんなことを考えると、なかなか勢いの弱い授業となってしまいます。文学部の特殊講義は、毎週の「最新研究報告」という位置づけですが、学生にしてみれば、なんでそんなことにこだわってるんだ、ドンドン先に進んでよって受けとめ方もあるでしょうか。

話すのより書くほうが時間に余裕があって、臨機即応じゃないかもしれないが、議論を展開しやすい。そのぶん、ハッタリやゴマカシは効きません。もし書けないなら、そもそも本人の頭の中でも分かってない、ということですね。

いま書いている本でも、そうしたことを考えながら、あれこれ推敲しています。

 


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