人文社会系研究科・文学部の塚本昌則教授(仏文学)が、昨年末に刊行されたパトリック・シャモワゾー『カリブ海
 偽典──最期の身ぶりによる聖書的物語』(紀伊國屋書店)の翻訳により、第48回日本翻訳文化賞(日本翻訳家
 協会主催)を受賞されました。

 

   パトリック・シャモワゾーは、現代のフランス語圏カリブ海文学を代表する作家です。長編第五作目となる『カリブ海
 偽典』は、ある独立運動の戦士の物語。死の床についた戦士が、身ぶりによってその生涯を語り、その身ぶりを記録人
 〈シャモワゾー〉が言葉に翻訳してゆくのですが、自分の翻訳がどこまで正しいのか、言葉の記録人には確信がもてません。
 その混沌とした、不確かな、異説や間違いにみちた物語から次第に姿を現すのは、幼い主人公の前に開けてゆく、自然と
 歴史が混然一体となったカリブ海世界の輝きです。

 

   選評では、クレオール文学特有のフランス語表現を、原文の雰囲気をとどめながら翻訳したことが高く評価されました。
 また作品の翻訳だけでなく、その背景にある、およそグローバリズムの対極にある文化と歴史の紹介に努めたことにも意義が
 認められました。

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