人文社会系研究科・文学部の柴田元幸教授(現代文芸論)が、今年刊行されたトマス・ピンチョンの『メイスン&ディクスン』(上下、新潮社)の翻訳により、第47回日本翻訳文化賞(日本翻訳家協会主催)を受賞されました。

この米国の作家ピンチョンの長編小説は、<メーソン=ディクソン線>で知られる、いずれも実在した天文学者チャールズ・メイスンと測量士ジェレマイア・ディクスンが行った測量の旅の日誌が元になっているそうです。ところが小説で語られる線引きの旅というのがまさしく珍道中で、とりわけ登場人物たちの素っ頓狂な会話が笑いを誘います。史実を想像力でコミカルな逸話に満ちた壮大なファルス(笑劇)に変えた作者もすごいですが、そのユーモアを苦労したとはいえ日本語にした訳者も大したものであり、翻訳文化賞の受賞はその功績にふさわしいと言えるでしょう。