人文社会系研究科の加藤陽子教授が、昨年刊行された著書『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)で、このたび第9回小林秀雄賞を受賞されました。

この本は、神奈川県の栄光学園歴史研究部で中高生を対象に行った5日間の講義をもとにしたものです。ふだんは文学部と人文社会系研究科で日本の近現代史を教える加藤教授が、駒場での教養学部時代を経た進学振り分けのあとの、文学部に進学してきた学生だけに戦争を語るのでは遅いのではないかという日頃の疑念に応えて、「鉄は熱いうちに打て」(同書「はじめに」)とばかりに、中高生に向けて語りかける構成となっています。

ずばり書名のとおり、1894年の日清戦争から1945年の敗戦に至るまでの半世紀、戦争を重ねる道を日本人はなぜ選んでしまったのかを、読者とともに考えるスタイルで、わかりやすく、刊行されるやたいへんな評判となりました。2002年に創設された小林秀雄賞(新潮文芸振興会)の「自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品に授与する」という同賞規定にまことにふさわしい、ユニークな歴史書です。