次世代人文学開発センター・萌芽部門・データベース拠点ワークショップシリーズ(第I期)開催のお知らせ(第2回) 2008年9月16日


東京大学大学院人文社会系研究科・文学部
次世代人文学開発センター・萌芽部門・データベース拠点
ワークショップシリーズ(第I期)
人文学の研究方法と「人文系データベース」の設計思想

第2回

▼提題 後藤 真(花園大学文学部文化遺産学科)
「正倉院文書データベース」(SOMODA)の設計思想

「正倉院文書データベース」(SOMODA http://somoda.media.osaka-cu.ac.jp/ )は、日本古代の文書である「正倉院文書」の「あらゆる」情報をデジタル化したデータベースとして作成された。正倉院文書は、日本古代史研究のみならず、日本語学や仏教学、東洋史、史料学にいたるまで、さまざまな文脈で研究が行われてきた。前述の「あらゆる」とは、この「研究に際し必要な情報」を可能な限り収集し、データ化することを、目指したための表現である。ここでの「あらゆる」はデータベースが目指す、ある種の理念モデルを指したものであるといえる。
また、正倉院文書は八世紀から近世~近代にいたるまで、さまざまな変貌を遂げてきた。そのため、特殊な研究手法(「復原」)が必要であり、「復原」を前提作業としなければ、研究が成り立たなかった側面がある。この「復原」を支援することは、「正倉院文書データベース」作成の重要な契機であった。この特殊手法のデジタル表現こそ、本データベースの作成の中心であったともいえる。
そこで、本発表では、この復原をデジタルで表現するために、行ったいくつかの方法と、正倉院文書の「復原」モデル、また、それを用いた研究手法のモデルの提示を行いたい。また、さらに「正倉院文書データベース」が対象としている「あらゆる」「研究に際し必要な情報」とは何か、そして、そこで表現されるべき要素はといかなるものなのかを提示し、さらに、現在実現しているデータベースとの関係を分析する。その結果、「正倉院文書データベース」ができていること、「正倉院文書データベース」で可能なこと、「正倉院文書データベース」で不可能なことについて言及し、研究者の必要とするモデルと、デジタルとの関係について、検討を行いたい。

▼コメンテータ 白須裕之(次世代人文学開発センター)
▼司会 下田正弘(次世代人文学開発センター)、永崎研宣(山口県立大学情報化推進室)

▼日時 2008年9月24日 13:30~
▼場所 東京大学文学部・法文2号館第三会議室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_02_j.html



本ワークショップシリーズについて

人文学は、長きにわたり紙と書物とを媒体として対象に向きあい、成果を公表し、研究の基盤を構築してきた。近年、急速に普及した高度な計算能力のコンピュータとそれらを接続する高速のネットワークは、こうした人文学の形態に変革を迫りつつある。だが、これまでに何が変えられたのか、変えられなかったものは何だったのか、今後変革しうるものは何なのか、しえないものは何なのか、これら諸点をその根拠とともに問うことなくして、人文学のための有効なデータベース構築は望みえないだろう。
人文学の研究と、その対象でもあり成果でもあるデータベースの構築という二つの営みは、それぞれが互いに根拠となり結果となりながら一つの世界をつくりあげてゆく。この形成過程を規定する要因、それは研究に本来する課題であるばかりでなく、現実的な制約のほうがより切実な場合も少なくない。こうした性質と制約を有する「人文系データベース」はいかなる設計思想にもとづいて構築されるべきなのか――この課題の解明は今後の人文学の方向に少なからぬ影響を与えるだろう。
本ワークショップは、こうした問題意識に立ち、人文学からの要求に潜在する可能性を顕在化させて人文学に提供し、それを受けてあらたに人文学から発信される課題を自身の発展に還元しうる「人文系データベース」のあり方を問おうとする。この第I期は、すでに構築・運用され人文学の研究に貢献しているいくつかの情報システムの設計思想に焦点を当て、それが対象とする研究分野の方法論を、どのような意図で、どの程度に反映し、現実的な制約のもとでどのようにして取捨選択しているのか、これらの課題を具体的に分析する。


*本ワークショップは学振・科研費・萌芽研究「次世代新大蔵経編纂スキームの構築」の成果の一部として開催されるものです。