次世代人文学開発センター・萌芽部門・データベース拠点ワークショップシリーズ(第I期)のお知らせ 2008年8月13日


東京大学大学院人文社会系研究科・文学部
次世代人文学開発センター・萌芽部門・データベース拠点
ワークショップシリーズ(第I期)
人文学の研究方法と「人文系データベース」の設計思想

第1回

▼提題 守岡知彦(京都大学人文科学研究所)
「CHISE (CHaracter Information Service Environment)の設計思想」

CHISE (CHaracter Information Service Environment) Project で開発を進めている文字オントロジーに基づく文字処理手法(Chaon モデル)と環境 (CHISE) の概要について述べる。
CHISE Project は、文字符号に依存しない文字処理環境の実現を目指して始まり、メタ文字符号とでもいうべき『文字素性』(character feature) を用いた『文字定義』というアプローチによって、この問題の解決に向けて技術的解決の筋道を付けるとともに、徐々に、文字の知識処理という方向に向けて発展しつつある。
こうした流れの中で、我々は、他のソフトウェア・モジュールに対するインターフェイスの側面から文字の表現や処理の問題を考えるとともに、文字の意味論的な側面について考察を行ってきた。その結果、文字素性の意義は、徐々に、メタ文字符号的側面から文字や文字解釈系に対するインターフェイスとしての側面に焦点が移りつつあるといえる。そして、このことは、文字や文字解釈系について考察したり、文字に似た別の現象との比較検討の中で文字の持つ概念としての側面や文字の固有性、解釈共同体の問題などについて考えるようなアプローチの必要性を要請しているように思われる。
この新たなアプローチは、文字素性をいかに設計すべきか?(文字素性とは何か?)という問に対する答えを与えるものだけでなく、漢字政策や標準化等の策定・評価に対して、統計的手法を補完するような視座を与えてくれるかも知れない。ここでは、『一般キャラクター論』と名付けた、この新たなアプローチの構想についても簡単に触れたい。


▼コメンテータ 白須裕之(次世代人文学開発センター)、相田満(国文学研究資料館)
▼司会 下田正弘(次世代人文学開発センター)、永崎研宣(山口県立大学情報化推進室)

▼日時 2008年8月20日 13:30~
▼場所 東京大学文学部・法文1号館 215教室



本ワークショップシリーズについて

人文学は、長きにわたり紙と書物とを媒体として対象に向きあい、成果を公表し、研究の基盤を構築してきた。近年、急速に普及した高度な計算能力のコンピュータとそれらを接続する高速のネットワークは、こうした人文学の形態に変革を迫りつつある。だが、これまでに何が変えられたのか、変えられなかったものは何だったのか、今後変革しうるものは何なのか、しえないものは何なのか、これら諸点をその根拠とともに問うことなくして、人文学のための有効なデータベース構築は望みえないだろう。
人文学の研究と、その対象でもあり成果でもあるデータベースの構築という二つの営みは、それぞれが互いに根拠となり結果となりながら一つの世界をつくりあげてゆく。この形成過程を規定する要因、それは研究に本来する課題であるばかりでなく、現実的な制約のほうがより切実な場合も少なくない。こうした性質と制約を有する「人文系データベース」はいかなる設計思想にもとづいて構築されるべきなのか――この課題の解明は今後の人文学の方向に少なからぬ影響を与えるだろう。
本ワークショップは、こうした問題意識に立ち、人文学からの要求に潜在する可能性を顕在化させて人文学に提供し、それを受けてあらたに人文学から発信される課題を自身の発展に還元しうる「人文系データベース」のあり方を問おうとする。この第I期は、すでに構築・運用され人文学の研究に貢献しているいくつかの情報システムの設計思想に焦点を当て、それが対象とする研究分野の方法論を、どのような意図で、どの程度に反映し、現実的な制約のもとでどのようにして取捨選択しているのか、これらの課題を具体的に分析する。


* 第2回は「正倉院文書データベース・プロジェクト」(後藤真・花園大学文学部、9月下旬)を主題に開催予定。詳細は決定次第公開。
* 本ワークショップは学振・科研費・萌芽研究「次世代新大蔵経編纂スキームの構築」の成果の一部として開催されるものです。