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出版 文化班第2回シンポジウム「新資料から見た出版文化史」




主催:出版文化班()、 国文学研究資料館和刻本プロジェクト
日時:2009年11月21日(土)13時00分~17時00分
会場:東京大学法文1号館115番教室   
プログラム:
  開会あいさつ:高津 孝(鹿児島大学、出版文化班) 

  〔報告1〕
    Michela BUSSOTTI(Ecole francaise d'Extreme-Orient、 フランス)
     「Genealogies in Huizhou history of book」
     コメント:高津 孝

  〔報告2〕
    劉 祥光(国立政治大学、台湾) 
     「宋代卜算書籍的流通」
     コメント:水口 拓寿(東京大学、朝鮮思想班)

  〔報告3〕
    入口 敦志(国文学研究資料館)
     「夢の変容―下天托胎場面における吹き出し型の夢 ―」

  〔報告4〕
    袁 慧(天一閣博物館研究員、中国)
     「論四明雕版印刷及范氏天一閣藏書」
     コメント:陳 先行(上海図書館研究館員)

  〔報告5〕
    陳 捷(国文学研究資料館、出版文化班)
     「宋代仏教寺院の出版活動に関する一考察」
     コメント:梶浦 晋(京都大学)

  〔総合討論〕16:20~16:50
 
  本科研出版文化班が開催する国際シンポジウムは、今回で2回目になる。今回は、特に出版文化に関連する新しい資 料について、各研究者にご発表をお願いした。
  ミケラ・ブソッティ先生は、イタリアのピサの出身で、1989年にベニスのカフォスカリ大学で中国学を修めら れ、南京に留学、その後、フランスに移られ、文献学で学位を取得され、2000年からフランス国立極東学院に所属されている。主著として、 「Gravures de l'école de Hui. Etude du livre illustré chinois de la fin du XVIe siècle au milieu du XVIIe siècle, Paris, EFEO, 500 p, 2001」(徽派の彫刻:中国帯図本の 研究 16世紀末から17世紀中葉までの)があり、徽州地区の出版文化が専門である。今回の発表「徽州における書物の歴史の一部としての家譜」は、フラン ス国立極東学院が北京で行っている安徽省徽州の家譜の総合カタログ作成に関連して、徽州家譜の価値について、書誌学的観点からお話いただいた。家譜は、こ れま で歴史学の面で研究が為されてきたが、出版文化に関連する資料としては全く利用されてはこなかったものである。本発表は、北京に所蔵される徽州家譜の厖大 なコレクションを検討されたブソッティ先生により、家譜が出版文化研究にどのような点で寄与可能かについてご発表いただいた。その結果、これまで、他の資 料からはうかがい知ることのできなかった出版文化に関する詳細な事実を家譜に見出せることが判明し、今後、家譜資料は出版文化史研究にとって重要な情報源 となることが明白になった。
  劉祥光先生は、米国コロンビア大学で博士号を取得され、現在は台湾の国立政治大学に所属されている。専門は宋代 史である。今回のご発表「宋代卜算書籍的流通」は、こ れまでの宋代出版文化研究に無かった全く新しい研究成果である。これまでの出版文化研究は、詩文、歴史書、思想書という士大夫の高級文化を主として対象と してきていた。しかし、最近の宋代史研究の新しい動向として、士大夫の存在に対する全体的把握というものがあり、実は、庶民文化の一部として見なされてき た占いなどの術数関係の書物に士大夫が深く関係していたことが明らかになってきている。本発表は、そうした学術研究の最新の動向に関連して、宋代の術数書 流通という観点から宋代の出版文化を論じたものである。
  袁慧先生は、本科研の主たる研究対象である寧波の著名な蔵書楼、個人図書館である天一閣博物館に所属されてい る。今回のシンポジウムでは、特に寧波天一閣に所蔵される明代の版本についてご報告いただいた。四百年以上前の版木が現存し、しかも伝来が明確であること は希有のことである。これまで天一閣に版木が存在していることはあまり知られていなかった。今回、図版だけでも23点が示され、天一閣版木の全貌が明らか にされたと言える。技術史的に、日本と中国では版刻の方法がことなるという指摘があったが、実物に即して論ずることが可能になったのである。
  国文学研究資料館の入口先生には、「夢の変容―下天托胎場面における吹き出し型の夢―」という題でご発表いただ いたが、これは図像学的アプローチである。現在の漫画などにおいても夢が吹き出しのイメージで描かれることは多いが、その歴史についての図像学的探求で、 日本、中国の様々な絵入り本から資料を博捜し、その開始、変容、日本的特徴について発表があり、大変興味深いものであった。図像学という新しいアプローチ による発表であり、大変興味深いものであった。図像学という新しいアプローチによる発表であり、ブソッティ先生がもともと中国の書物におけるイメージの歴 史についての研究者であることから、興味深い交流が実現した。
  同じく国文学研究資料館の陳捷先生には、「宋代仏教寺院の出版活動に関する一考察」という題で発表いただいた。 陳捷先生は、北京大学のご出身で、今回のご発表は、出版文化史研究に仏書はどのように利用可能かと言う観点から研究された研究成果が示された。仏教書誌学 の分野は、日本において特に研究が進んでおり、専門家である梶浦晋(京都大学)先生に特にコメントをお願いした。
  今回のシンポジウムには、米国のチャールズ・ハートマン(アルバニー大学)先生にもご参加をお願いしていたが、 ご家族の病気により来日ができなかったことは残念であった。イタリア、台湾、中国、日本という様々な地域の研究者によって、最新の研究成果が発表される会 となり、主催者として、ご発表された各先生方、コメンテーターをお引き受けいただいた先生方には感謝を捧げたい。
(文責:高津孝)

【リンク】
天一閣博物館
  →電子期 刊『天一閣文叢』第一期(2007年11月)
  *袁慧「《古今図書集成》与天一閣——兼論清帝弘暦対天一閣的特殊関注」ほか
国文学研究資料館

【関連書籍】
『以 正史為中心的宋元版本研究』(1993年10月刊)
『中国文化史ラ イブラリー1 中国の書物と印刷』(1999年12月)
『打 開金匱石室之門:古籍善本』(2003年8月刊)
『鬼魅神魔:中 国通俗文化側写』(2005年5月刊)
  *劉祥光「両宋士人与卜算文化的成長」ほか(台 湾宋史研究網 劉祥光参照)
『アジア 遊学93:漢籍と日本人』(2006年11月)
『風水 思想を儒学する』(2007年11月刊)
   
【関連活動】
出 版文化班シンポジウム「中国東南部の出版文化と日本の出版文化」「中国出版文 化の社会史」(2007/12/13・15)
文献調査研究部 門・総括班共催国際シンポジウム「文献資料からみた東アジア海域文化交流」(2008/1/12-13)・
現地調 査研究部門『東ア ジア海域交流史 現地調査研究~地域・環境・心性』第3号(2009年1月刊)
  *入口敦志「『帝鑑図説』受容概観―絵空事が現実に―」、梶浦晋「日本における漢文大蔵経の収蔵とその特色 ―宋元版大蔵経を 中心に―」ほか
重点 項目「寧波を中心とした記録保存の社会文化史」第1回研究会(2009/2/28 -3/1)
東アジア漢籍交流シンポジウムin京都「《域外漢籍》の研究価 値を考え る」(2009/11/14)
総括班主催沖縄 シンポジウム「東アジアの海域交流――琉球という視 点から――」(2009/12/12)
 
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