- 日 時: 2006年10月28日(土) 10:30〜17:30
- 場 所: 東京大学文学部 1号館2階215番教室
- 午前の部: 記念講演 尾藤正英(東京大学名誉教授)「『大日本史』と水戸学」
- 午後の部: シンポジウム
- 報告1: 松田吉郎(兵庫教育大学)・神吉和夫(神戸大学)「水戸藩の水利事業と朱舜水」
- コメント: 永冨青地(早稲田大学)
- 報告2: 前田 勉(愛知教育大学)「水戸学の「国体」論」
- コメント: 近藤成一(東京大学)
- 報告3: 鈴木暎一(常磐大学)「『大日本史』の続編計画をめぐる問題」
- コメント: 小島 毅(東京大学)
- 総合司会:伊東貴之(武蔵大学)
- 参加人数:36名
- 本シンポジウムは『大日本史』を研究対象の一つとしている王権理論班を中心に、江戸時代の思想や水利施設にかかわる6班の連携共催の形でおこない、36名の参加者(うち、にんぷろメンバーは9名)を得た。
- 午前中の尾藤講演は、17世紀の水戸学草創期から説きおこし、『大日本史』編纂作業の経過が水戸学の展開・変質とどのように関わっていったかについて、講演者自身の長年の研究成果をまとめてわかりやすく語ったものとなった。
- 午後はシンポジウム形式で3つの報告がなされた。まず、神吉・松田報告は、朱舜水が水利技術を日本にもたらした可能性について画像を提示しながら述べた。(神吉は外国出張のため、発表は松田がおこなった。)これに対して、コメント担当の永冨から、それらが必ずしも朱舜水個人に限定はできない旨の指摘がなされた。ついで、前田報告は江戸時代後半の経済活動好況による社会的流動化現象が国体論を生み出していく経緯と、その国学との異同について論じた。これに対して、コメント担当の近藤から、禰寝文書を具体的材料として系譜意識の多様性や虚偽の系譜を作成する心性の問題が指摘された。最後に、鈴木報告は、自身の年来の研究をふまえて『大日本史』続編の計画の経緯・概要とその意義を紹介した。これに対して、コメント担当の小島から、実質的な武家政権の歴史をあくまで天皇の歴史として語る紀伝体史書がはらむ思想的問題点が指摘された。
- 総括討論では、まず尾藤が自身の講演の補足として日本と中国との王権のありかたの相違を論じた。その後、出席者から講師・報告者4名に対して次々と質問が提起され、予定された時間を超過して散会した。水戸学における天皇や国体の問題を、日本の実際の歴史過程とそれを語る装置としての儒教とのあいだの緊張関係からとらえていく必要性が痛感されたシンポジウムであった。
(文責:小島 毅)
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