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文化資源学研究室は2000年度に創設された。百年を超える長い歴史を有する文学部としては比較的新しい研究室である。正式には文化資源学研究専攻といい、大学院のみで、学部に対応する専修課程を持たない。文化資源学と文化経営学の2つのコースから成る。

2コースに再編されたのは2015年度からのことであり、それ以前は文化経営学、形態資料学、文字資料学(文書学・文献学)で構成されていた。後2者を統合して文化資源学コースとし、文化経営学コースの前に置く構成はつぎのように発想された。

世界には、「かたち」と「ことば」の膨大な蓄積がある。文書とは書かれた「ことば」、文献とは書物になった「ことば」である。多くの人文学・社会学系の学問は、もっぱらこれら「ことば」を相手にしてきた。ところが、現代では学問領域があまりにも細分化されたばかりか、情報伝達技術の発達が「ことば」とそれを伝えるメディアとの関係を希薄なものに変えてしまった。一方、「かたち」を研究対象とする既成の分野は、本研究科においては美術史学と考古学ぐらいだが、いったん学問領域が設定されると、おそらくそこからは無数の「かたち」が視野の外へと追いやられてしまう。文化資源学では、さらに「おと」の問題も視野に入れている。ここでは「おと」という目には見えないものが、どのような「かたち」(身体、楽器、音符、楽譜、音楽学校、コンサートホール、レコード、テープレコーダー、CD、音楽配信サイトなど)をともなって生まれ、伝わるのかをも考えようとしている。

「文化資源学Cultural Resources Studies」(resourceは泉に臨むという意味)とは、いわば既存の学問体系の側に立つことよりも、体系化のもとになった資料群の中に分け入ることから始まる。文化を根源に立ち返って見直し、資料群から多様な観点で新たな情報を取り出し、社会に還元することを目指している。具体的には、史料館、文書館、図書館、博物館、美術館、劇場、音楽ホール、文化政策、文化行政、文化財保護制度などの過去と現在と未来を考えようとするものだ。

8人の担当教員(文化資源学=中村雄祐教授、野村悠里准教授、髙岸輝教授[美術史学と兼担]、西村明准教授[宗教学宗教史学と兼担]、吉田寛准教授[美学芸術学と兼担]、大向一輝准教授[次世代人文学開発センターと兼担]、文化経営学=小林真理教授、松田陽准教授)、さらに助教=藏田愛子の、専門分野は、文化資源学が既成の学問領域を横断するトランス・ディシプリナリーな性格を有することを反映して、文書学、書物学、美術史学、宗教学宗教史学、美学芸術学、文化政策・文化行政論、文化経営論、文化遺産論、国際協力論等などと多彩である。

さらに、学内では史料編纂所、総合研究博物館、東洋文化研究所、埋蔵文化財調査室と連携し、学外に対しては、国立西洋美術館、国文学研究資料館から兼任教員を、文化庁等から非常勤講師を招いている。

文化資源学研究室のさらなる特色は、社会人に対して大きく門戸を開いていることである。それは、大学を社会に対して開こうとする意志表示であり、本研究科にあっては文化資源学研究室がその最先端にある。

多くの社会人学生が図書館や美術館、国際文化機関や出版社を職場としている。それらは単なる学生の所属先で終わらず、研究室を含めた相互の関係がインターネットのように増殖しつつある。学生の職業も経験も年齢も多種多様であることが、他の研究室にはない活気をもたらしている。社会人が大学に逆流し(リカレント教育)、反対に学生が在学中から社会の現場に出る(インターンシップ)という仕組みを今後も積極的に構築したい。