日時:
3月25日 14:00−16:00 16:30−18:30

主旨:

現代社会において宗教と教育はどのように関わっているか、また関わることができるかは、本大会の総合テーマである「宗教――相克と平和」に直結するテーマである。宗教の多元的状況の把握、その中でのアイデンティティの形成、宗教間の相互理解と共存といった今日的な問題は、宗教と教育が交錯する場において具体的な形をとると考えられる。したがってこのパネルは、宗教教育専門家のみならず、多くの大会参加者の研究にとっても資するものになりうると期待できよう。とくに「公教育と宗教」「宗教教育と平和」の二点について、宗教と教育の関係をアジア・アフリカ・ヨーロッパ・アメリカの事例を織り交ぜながら広く議論していきたい。

パネル1 「公教育において宗教をいかに教えるか」

宗教を教えるというと、日本では宗教系学校の宗教教育(宗派教育)のことと思われやすいが、近年国際的に注目を浴びているのは公教育における宗教の授業である。先進諸国ではそれは多文化教育の一環として、異教徒に対する寛容の精神を育むために求められることが多い。すなわち、異文化理解としての宗教の授業である。日本でも、そのような観点から宗教学者により宗教の授業の必要性が説かれることがあるが、新しい動きとしては、教育学専門の研究者が価値教育としての宗教の授業を公教育に導入することを検討し始めたことである。このパネルでは、外国からの参加者のために日本の宗教教育とそれに関する議論の経緯や現状について説明するとともに、教育学からの提言、さらには公教育としての宗教教育の歴史が長いイギリスからの報告と問題提起を行う。この分野でのアジアと西洋の比較研究や合同研究はなお数少なく、このパネルが交流の一契機となることを願う。

司会:
マイケル・パイ (マールブルク大学/大谷大学)

パネリスト・論題: (アルファベット順)
デニス・クッシュ(バス・スパ大学) 「宗教科目を公立校カリキュラムで必修とすべきか」
江原武一 (京都大学) 「公教育における価値教育としての宗教教育―比較の観点から―」
藤原聖子 (大正大学) 「日本の高等教育における宗教の授業―調査報告―」
ロバート・ジャクソン(ウォリック大学) 「宗教・教育・多元性―公立校における多文化主義的宗教教育への解釈的アプローチ―」

レスポンダント
ヘリー・テル・ハール(ハーグ社会科学研究所)

 

パネル2 「宗教教育と平和」

日本では一般的に平和教育というと、広島・長崎の惨事等を伝える反戦教育が中心であり、宗教への言及は稀である。しかし、この状況は日本特有というわけではなく、他国でも平和教育の文脈で宗教教育が語られることはこれまであまりなかったと言われる。世界宗教者平和会議に本格的な平和教育委員会が設置されたのも近年のことである。

このパネルは、アジア、アフリカ、欧米各国のそれぞれのアクチュアルな社会・政治情勢の中で、平和構築のための宗教教育にはどのような試みがあるか、何が必要とされているかについての報告と討論を中心とする。

このような問題は宗教界内部のものとみなされがちだが、宗教を信じる者は不寛容で戦争を起こしがちだというような考えを非宗教者が持つ場合、それもまた偏見と対立のもととなる。ゆえに、公教育においてさまざまな背景をもつ生徒にいかに宗教を教えるかを論じる第一パネルを土台に、さらに議論を深めたい。

司会:
宮永國子 (ハーバード大学&個の可能性研究会)

パネリスト・論題: (アルファベット順)

ザキユッディン・バイダウィ (スラカルタ・ムハマディア大学) 「多文化主義神学に基づく宗教教育による調和・平和構築―現代インドネシアのための代替策―」
金 鍾瑞(ソウル大学) 「現代韓国における宗教間対立と宗教教育」
コンスタンス・アンバサ・シサーニャ(ケニヤッタ大学) 「平和教育を求めて―アフリカの平和構築における宗教の役割」
ネリー・ファン・ドーン・ハーダー(ヴァルパライゾ大学) 「キリスト・イスラム・ユダヤ教における宗教的平和構築の学習」

レスポンダント:
アーシュラ・キング(ブリストル大学)