民衆の宗教理解
小田 淑子(関西大学)

日時:
3月24日(木)13:30〜17:30

主旨:
 今日の世界で、より差し迫って求められる相互理解は、限られた知識人による洗練された宗教間対話より、草の根レベルで、特に宗教に知識も関心も持たない人々が、異質な宗教、文化、民族に偏見を持たずに、隣人や友人として共生できることだろう。

草の根の宗教理解の特徴を挙げる。(1)洗練された教義よりむしろ、日常的な儀礼と生活様式を理解すること。(2)自他の宗教について会話し、説明をするには、宗教に関する基礎知識や用語が必要である。個人的に無神論であって、他者の信仰を尊重できることも必要である。(3)このような草の根レベルの宗教理解を高め、普及するには、何らかの宗教教育が必要だろう。偏見を破るのは正しい知識、知的理解である。

個人帰属意識は重要だが、それが排他的ナショナリズムにならない歯止めを考えることは、現代の知性に要求されている。


小田 淑子(おだ よしこ)

東京大学文学部イスラム学研究室助手(1984〜89年)、京都女子大学助教授(宗教学担当、1989〜97年)。その後、関西大学総合人文学科教授に着任し、現在に至る。専門は宗教学、イスラーム。多くの論文を発表し、イスラーム思想、宗教共同体、宗教における倫理と法、宗教研究の方法論などを論じている。主要論文に、"The Concept of the Ummah in the Qur'an" (Orient, Vol. 18, 1984)、"Muhammad as the Judge: An examination of the specific quality of Muhammad's charismatic authority" (Orient, Vol. 20, 1987)、「イスラームにおける罪悪観」(『宗教における罪悪の諸問題』山本書店、1991)、 「宗教における倫理と法」(『京都女子大学宗教・文化研究所紀要』第5号、1992)、「宗教史の方法論」(『新しい教養 宗教学』昭和堂、1999)、「日常性における宗教」(『宗教の根源性と現代 第2巻』晃洋書房、2001)などがある。