グローバルな宗教復興を説明すること
エジプトの事例
タラル・アサド(ニューヨーク市立大学、米国)

日時:
3月28日(月)9:00〜10:30

主旨:
本発表は、グローバルな宗教復興に関してなされるさまざまな説明、とりわけそうした宗教復興が社会的な困窮と不安に対する応答だとする考え方について考察する。その際、エジプトにおける状況とそこでの諸々の議論に着目する。これをもとに、一般に行われている説明に反論して、それが主に世俗主義的な目的論を無批判に前提しがちな点で大きな問題をはらんでいることを指摘する。そして結論として、問いただされ明らかにされるべきは<世俗主義とはそもそも何であるか>だ、と提言する。

タラル・アサド(Talal ASAD)

ニューヨーク市立大学大学院、人類学特任教授(University Distinguished Professor)。宗教と世俗主義という現象について広範な研究をおこなうとともに、中東における宗教復興、すなわち西洋の文献で通常イスラーム主義と呼ばれる現象を専門とする。これまでに50本以上の論文と5冊の単著を発表。その業績は人類学、歴史学、近代性研究、そして宗教研究などにおおきく寄与してきた。有名な著作 Formation of the Secular: Christianity, Islam, Modernity (Stanford University Press, 2003) では、近代の西洋と中東において世俗的な感性と態度を形づくった主要な歴史的推移を強調しつつ、世俗主義の観念、実践、政治的形成などを論じた。同様に広く読まれた著作 Genealogies of Religion (Johns Hopkins University Press, 1993; 邦訳『宗教の系譜』[岩波書店、2004]) では、「宗教」なる観念が歴史的に構築された道筋を跡づけた。近年は、中東における法の世俗化について研究をすすめている。