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文化の神学と諸宗教の対話
Theology of Culture and Dialogue of Religions |
[ 3月25日 20:00−21:30]
グローバリゼーションの文脈において、私たちは今日、多様な種類の文化的遭遇や文化的衝突に直面している。多くの国家が、伝統的で自己完結した社会から、現代的で開かれた社会への移行を経験している。それゆえに、開かれた態度は、人々が共生し、精神生活において交流を行なうために必要不可欠なものである。そしてまた、現代においては、キリスト教および他の多くの宗教が実際に、「グローバルな」宗教となっている。
多元主義と世俗主義の挑戦によって、特定の宗教を信仰するある種の人々は、自らのアイデンティティを失い、信仰の追及という面において不安定になってしまっている。その結果、宗教の領域におけるこの開放化によってもたらされるもう一つの現象は、より多くの人々が改宗へと向かう傾向として現れる。今や多くの宗教が、対立や競合、合流の途上にあるとはいえ、以前よりもはるかに密接なつながりを持つようになっている。現代の多文化的な「グローバル・ヴィレッジ」において、いかにして生き残り、発展を続けていくかは、それらの諸宗教にとって明らかに重大な問題である。
本講演において私は、こうした通文化的な文脈における、実践的なキリスト教神学の理論的発展について論じ、一つの方向ないしは一つの側面しか持たない伝道の神学から、より多面的で広く開かれた文化の神学への変化について述べたい。文化の神学は、「文化変容」、「文化化」、「文化的支配」、「文化適応」あるいは「異文化適応」といった、キリスト教の他文化に対する態度を扱う。私たちはそこに、「自己同一性」と「世界意識」、「文化的排他主義」と「文化的包括主義」、「地方主義」と「普遍主義」、「土着化」と「エキュメニズム」との間の緊張関係を見ることができるが、そうした緊張関係は、現代の諸宗教の遭遇や対話における複雑な状況をも反映している。
宗教対話は、多様な宗教に由来する異なるアイディアの合流の可能性を示している。この対話に加わり、肯定的な結果を得るためには、キリスト教はその伝統的な「文化の神学」を、新しい「文化適応の神学」にまで発展させなければならない。それと同様に、他の諸宗教も、対話を宗教内のレベルから宗教間のレベルにまで推し進めなければならない。そして更には、宗教と他の文化システムとの間の平和的対話のレベルにまで到達しなければならない。この進歩はもちろん、非常に困難ではあるが、衝突の解消と人類の持続的発展にとっては必要不可欠かつ重要である。
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