教師の声

                           

留学生のスピーチで、来日前の国での生活や家族の話を聞くことがあります。集中授業のスピーチでは、西瓜の収穫を手伝いに行って畑で遊んでいるうちに、いつの間にか西瓜を枕に寝てしまった幼い頃のこと(中国・女)や、長い休みには田舎のおばあさんの家でいっしょに半日かけて夕食を作り、ゆっくり食事を楽しんでいたという話(フランス・男)、空港まで見送りに来た母親が留学する息子に伝えた言葉(台湾)等、いろいろな話を聞かせてもらいました。

私の目の前にいる学生たちは、こういう家族や故郷の中で育まれ、それぞれの時間の流れの中で大きくなってきたのだと実感します。一人一人が他の誰とも違う大切な存在だと改めて気付かされる思いです。

 『ぎんなん』にもスピーチ原稿のいくつかが載っていますが、教室では学生の声と話し方で直接聞くことができるのです。「役得」だと思います。

中込明子

 

 

 東京大学近辺には、文学者ゆかりの場所が数多くあります。読解の授業で夏目漱石の『吾輩は猫である』を取り上げたのをきっかけに、夏目漱石旧居跡と、こちらも旧居跡に建てられた森鷗外記念館に学生の皆さんと行きました。

 夏目漱石旧居跡は、正門を出て20分くらい歩いた、日本医科大学の同窓会館の所にあります。夏目漱石がここに住み、『吾輩は猫である』を書いたと記した碑が立ち、その上の塀に金属製の猫の彫刻が、まるで塀の上を歩いているかのように置かれています。一方、森鷗外旧居跡に建てられた記念館は、大変現代的な建築ですが、鷗外関係の写真によく出て来る独特の形をした大きい庭石はちゃんと残されていました。内部には、興味深い資料がたくさん展示されています。漱石と鷗外の旧居は、歩いて数分の距離にあります。また、漱石が住む十年少し前に、短い期間ですが、同じ家に鷗外も住んでいたので、二人の不思議な縁を感じます。二人はどんな思いでこの本郷界隈を歩いていたのでしょうか。想像はふくらみます。皆さんもぜひ、本郷や上野界隈の文学散歩をしてみて下さい。

 藤澤るり

 

 

 最近、以前の教え子たちの成長ぶりを目にすることが多く、いつの間にこんなに上達したのだろうと驚いています。しかし、考えてみれば、もともと素質のある学生さんたちが花開いたということなのでしょう。東大で教えられるとはなんと幸せなことだろうと改めて思うこのごろです。

一方、社会に目を向けてみると、この一年は「今年の漢字『金』」に表されたように、ノーベル賞やオリンピックのメダルは話題になりましたが、震災からの復興もなかなか進まず、日本にとってあまりよいニュースがなかったように思います。今年はどうでしょうか。そして、アベノミクスの今後はいかに...

 さて、『ぎんなん』27号では作品執筆者名を姓名の順に統一しました。多少厚くなりましたが、かなり充実した内容になったと思います。ただ、日本語授業の受講生だけの作文集になってしまったのが、ちょっと心残りです。受講生以外の当研究科・学部の留学生や卒業生、外国人スタッフの方からの投稿作品もお待ちしています。文章・詩・俳句など、日本語で書かれた作品であれば、掲載させていただきます。

最後にお知らせです。日本語教室のホームページを立ち上げました。過去の『ぎんなん』も見られますので、お時間のあるときに見ていだければ幸いです。

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/nihongo/index.html

寺田徳子