文章表現Ⅱクラス  自由テーマの小論文

コンピューター犯罪

 

美学芸術学   曹 有敬韓国)

 

はじめに

 最近、コンピューターやインターネットの悪用問題が深刻化している。コンピューターのめざましい発達は、我々人類の生活を豊かにしてきており、また、積極的に自らの生活にコンピューターを生かすライフスタイルも定着してきた。いまやコンピューターあるいはインターネットがない生活は想像できないほどであろう。しかし、その反面、コンピューター、特にインターネットはしばしば悪用され、新型の犯罪タイプを生み出し、様々な被害を引き起こしている。インターネットを通じて他人の情報を盗み、その個人情報を悪用する犯罪は、周知のごとく多発しており、コンピューターの機能やソフトを新たに作成し、まだ知られていない技術を犯罪に応用する例もある。これらに対し、各社は競ってセキュリティソフトを開発し、新しいウィルスが出ればただちに検知できるようにするが、さらに新しいタイプの犯罪が次々と生み出され、犯罪者と正規技術者の戦いはあたかも終わりの無いマラソンのようで、互いに凌ぎを削っている。

しかしなぜこうした問題が増加するのだろうか。また、こうした問題を解決するには何が必要であろうか。さらに、こうした犯罪は地域とのつながりがあるようにも思われるが、その点はどうであろうか。本稿ではこうした犯罪と地域との関係に着目し、各地域の代表的な事例を取り上げ、その違いを明らかにすると共に、コンピューター犯罪の原因についての検討を試みた。

 

本論

 コンピューター犯罪を地域別に分類すると、面白い結果が発見される。ある地域の文化、またはその地域の長い歴史の中で形成された人々の特徴的かつ普遍的意識とネット犯罪のタイプには明らかな関連性が見られる。すなわち、コンピューター犯罪は、人の属している歴史的背景や社会的環境などと関連性があり、ある地域で顕著な犯罪が、他の地域では非常に低い発生率であるという現象が見られるのである。以下アメリカ、韓国、日本における実例を見てみよう。

 

クレジットカード情報は非常に重要かつ有用であり、生活になくてはならない物であるアメリカでは、インターネットからのクレジットカード情報の流失や盗用が重大な問題になっている。

アメリカでは誰でも簡単にクレジットカードを作ることが可能であり、月々の支払い額を自分で決めることもできる。その上、クレジットカードは使えが使うほど、信用等級も上がっていく。このような事情を背景に、学費や家賃、電気料金等、各種料金の支払いにも、インターネットを通してのクレジットカード決済が広く普及している。また、Amazonに象徴されるような、インターネット・ショッピングもアメリカ人にとって生活に欠かせないものとなっており、クレジットカード情報のインターネット上の使用率は非常に高い。

このような生活風土と文化の中では、クレジットカード盗用問題が発生する可能性が他の地域、すなわち、クレジットカードの普及率が低い国と比べて高いのは当然である。それに対応すべく、セキュリティソフト関係のビジネスも盛んであるが、それでもなおクレジットカード盗用問題は大きな問題である。

 

一方、かなり以前から幅広い年齢層でコンピューターやインターネットが使われている韓国では、ネチズン[1]の力が急速に大きくなり、自分達のコミュニティーを結成し、人の道徳性を自分達の基準に基づいて判断し、相手を非難することが社会的な問題となっている。その問題点は、匿名性を悪用し、言葉で他人を傷つけることである。

例えば、数年前ある有名女優Kが反社会的集団と関係があるという報道がされた事件があった。これについては単なる噂の域を出ないものであったのだが、ネチズンはKを執拗に中傷、批判した。エスカレートした誹謗は別の噂を作り出し、ついにKを自殺へと追い込んだのである。

このようなネチズンの行動を駆り立てているのは、韓国人の意識の中に存在している儒教思想の影響であると考えられる。すなわち、人の前に立つ者は、君子でなければないという道徳観である。また、これに付随して、一元化されている社会的雰囲気もその現象に関与しているであろう。つまり、韓国では個人性よりも集団的行動が重要視され、共同の敵を作り出すことでコミュニティーの一体感や結束力が約束されるのである。このような現象によって、多くの有名人がネチズンの標的にされ、自殺またはうつ病に追い込まれている。

この問題は芸能界や政治界に限られるものではない。事実、韓国に於ける自殺率増加の要因となっている。対策として、ネットで使うIDの実名化やサイーバー警察などあるが、今なおこの深刻な問題は完全には解決されていない。

 

 さて、日本のインターネットおよびコンピューター犯罪にはどのようなものがあるのだろうか。一見して、アニメーションや各種ゲームへの熱中ぶりがインターネット犯罪の種類を規定しているように思われる。

現実と幻想の区別が曖昧となること、もしくは、アニメ(幻想の世界)的行為を現実に行うことをねらった犯罪がある。悪質な課金制度をもつようなソーシャルネットワーク及びゲームの存在(いわゆるコンプガチャ[2]問題等)がそれにあたる。人間の欲に付け込んだ、悪質で、悪意のある行為である。架空の世界であるはずのゲームの中に実際の金銭を組み入れることにより、現実と空想の区別を曖昧にするのである。課金されているユーザーは、実際の現金を見ることはないため、ある意味、課金制度がない純粋なゲームをしている感覚を持ちやすい。

しかしながら、これは犯罪と定義してよいかという疑問もあろう。これは単なる新しいビジネスモデルであり、使用する側に問題があったために規制されたと考える向きもあるからである。

最近話題に上った犯罪としては、平成25年2月12日の朝日新聞記事で報じられた遠隔操作事件が挙げられる。こちらの方は、犯人の警察に対する行為が、非常にアニメ的と言えよう。新聞社等に3度もメールを送付し、謎解きをさせようとした行為である。このような行為はアニメや漫画の世界ではよくある。名探偵コナン等、推理物は今でも人気のジャンルだ。遠隔操作という、いわば変装犯罪とも言える行為、なおかつ自己顕示的行為に走るというのは、少し前まではアニメや小説の中の世界だけで行われていたことではないだろうか。いずれにしても、日本の場合はアニメ的要素が強い犯罪が多いようだ。

 

結論

 以上、コンピューターやネット犯罪について、地域別に考察を試み、新たに登場してきた犯罪形態の原因を明らかにした。その結果、ある地域の因習的な観念や社会的環境などがコンピューターやネット犯罪に大きな影響を与えることが証明できたであろう。しかし、どこからどこまでがコンピューター犯罪と定義しえるのか、その犯罪範囲を規定するにはまだ曖昧な部分がある。また、規定された犯罪に対して、適切な制裁を加えることは可能であろうか。今後の課題は、コンピューター犯罪について国内や国外のより多くの事例を収集、分析し、犯罪性と非犯罪性を明確にすることである。

 

*参考文献: 朝日新聞夕刊 第13面(平成25年2月12日) 



[1] Netizenとはnetwork citizenの略。コンピューター通信を用い、参与する人々と定義される。

[2] 携帯電話やスマートフォン向けのソーシャルゲームの課金方法のひとつ。コンプリートガチャ(Complete gacha)とも言う。ンダムに入手できるアイテムから特定の複数アイテムをすべて揃えることで稀少アイテムを入手できるシステムを指す。