文章表現Ⅱクラス  大学の国際化

大学の国際化を考える

―国際化とは何か―

 

言語学  崔 允正(韓国)

 

韓国では大学の国際化を進めるために、次のようなことを奨励している。

1)英語による講義の実施

2)外国からの留学生の受け入れ拡大

しかし、これを本当の国際化と呼んでもいいかどうかは考える余地があると思う。まずは、国際化とは何かを考える必要があるのではないだろうか。

 . 100%英語の講義や授業は効率性があるのか

世界の首脳が集まる場や、国際連合などの国際機構と呼ばれるようなところで共通語として英語が用いられているのは事実である。しかし、大学とは知識を習得する場であるだけではない。習得した知識を活用し、深く考え、他の人と活発に議論しながら自分の考えの枠を広げるところではないのか。英語を母語としない国での100%英語の講義は効率性があるのかに関して、韓国では長い間議論されてきた。特に、韓国の科学名門であるKAISTの学生の自殺事件は、英語授業への負担なども原因だという。学生たちに有無を言わせず英語の負担を負わせてまで英語の講義を進める必要があるのか。

また、英語圏ではない国からの留学生の問題はどうするのか。勿論、先にも述べたように、英語が国際舞台の公式の場での共通語であり、ほぼ世界中で使われているのも事実である。しかし、英語が母語でない国に留学をする留学生の場合、留学先の言葉を学ぼうとする人もいるはずである。ここから次の問題に入ろう。

. 留学生の数が増えることだけで国際化といえるのか。

韓国の場合には学校の国際化の推進のため、また、様々な大学の乱立、少子高齢化などの影響ともあいまって、学生定員の減少の解決策として、留学生の受入枠の拡大なども奨励している。

多様な人々を受け入れるだけで、様々な文化に触れることが出来るだろう。しかし、外からの文化を受け入れようとする心構えも重要だと思う。外部からの刺激を好まない人もいるだろう。また、留学生と、英語が母語でない学生の場合の疎通は、留学先の国の言葉(日本では日本語になる)で行われるはずだが、言葉を交わすだけで、国際化されているとは言えないだろう。せっかく、外部からの人を受け入れるのだから、それがお互いの発展のための結果が得られることが何より重要だろう。

韓国の国際化への努力の例から、日本の大学、特に東大の国際化に関する問題を考えてみよう。

まず、英語による講義の実施については難しいのではないか。すでに、100%とまではいかなくても、大学などでの授業では、英語やさまざまな国語の原書を用いて、日本語に訳したり説明したりする授業が実現しつつあると思う。英語授業の場合は、全学部実施までする必要はないと思う。日本語学や文学のように日本語活用が重要な分野とのバランスも考えなければならない。

次に、海外からの留学生受け入れ枠の増加については、学内部の財政確保の面からも利点があり、また、自国の学生らには様々な文化に接せられる場になる環境を提供できるという点で望ましいと思う。

しかし、これだけでは十分ではなく、私はさらにもう二つの提案をしたい。

3)留学生を受け入れようとする心構え

4)学制―入学時期の柔軟な配慮

. 留学生におけるアイデンティティーの葛藤の解決

独特の文化があり、日本語という言語が話されている日本で、言語や文化(宗教、習慣)などが違う留学生が生きるのは、たやすいことではない。無論、日本に留学するほとんどの人々には(日本語を勉強しようとしたり、日本語で研究をするために来るので、)多少とも、日本語や日本に関する知識などはあると思う。しかし、短期の留学生から、後に日本での就職を考えている長期の留学生まで留学期間はさまざまだが、日本に定着する過程で少なからずカルチャーショックなどによる葛藤があり、いくつかのパターンがあると思う。

① 日本に対して肯定的な人

② 一時、否定的になったこともあるが、それを克服した人

③ はじめは肯定的だったが、否定的になった人

④ はじめから否定的で、結局、そのまま否定的であり続ける人

これには個人の性格の問題も関係すると思う。また、実際に来てみたら、予想と大きく異なって、③のような結果になることもあるかもしれない。さらに、文化の違いから来る問題もあると思う。例えば、日本では笑顔が美徳で、謝る場面でも笑顔を見せなければならないと考えるのかもしれないが、韓国のような国では、笑顔で謝罪の言葉を言うと、本音が誤解される場合もあると思われる。こうした微妙な文化の違いは、やはり実際に接しながら調整する必要があると思う。

. 学制-入学時期への柔軟な配慮

昨年の秋頃に、東大で留学生を対象に秋入学に関するアンケートが行われたことを覚えている。秋入学は日本から海外への留学を考える学生への配慮としても、また、海外留学から帰ってきた学生に対しても、また、海外からの留学生のためにも良い試みだと思う。しかし、問題は、海外の学制も様々なので、全部に合わせようとするのは大変だと思う。実施可能であれば、なるべく入学時期を柔軟にし、できるものなら、年2回ではなく、それ以上、たとえば3ヶ月ごとの入学許可もできればいいのではないかと思われるので、検討してほしい。

 実施は難しいことだと思う。だが、すでに東大の場合は国際化への準備をしていると考えられる。それに対して、自分の国(韓国)は特別に国際化に関しての確たるヴィジョンがあるとも言えず、また、試みの途中なので今後の展開に期待したい。東大が国際化に成功して、多くの国々との学術交流のパイプ役になってくれることを望みたい。