教師の声
 
 去年の今頃、3月は、地震に津波、原発事故と次々に恐ろしいことが起きました。ま
た、それに続いて、計画停電の実施や水道水からのヨウ素検出、外国人が東京から姿を消したというニュースも流れました。度重なる余震も続いていて、これからの生活は一体どうなるのか不安な時期でもありました。
 それでも4月に入ると桜は満開となり、キャンパスに外国人留学生が次々と戻ってき
ました。本当にうれしかったです。そして東大では、ほぼ例年通り新学期が始まりまし
た。こんな状況の日本に来てくれた留学生の皆さんには感謝です。
 1年後の今、被災地の復興はまだまだ遠く、原発も落ち着いたとは言い難い状況で
す。また、地震活動の活発化により、次の大地震も危惧されています。私たちは危険と隣り合わせの毎日を覚悟しつつ、それでも日常の中に喜びを見出し、ささやかな幸せに感謝して生きてゆくほかはないのでしょう。  
                                           中込明子



 昨年末に自宅で転び、左足の足首と甲をひどく捻挫してしまい、一週間は全く歩けま
せんでした。松葉杖を使って出掛けられるようになると、今まで殆ど気付いていなかっ
たことを多く知りました。例えば、道路や歩道に段差や傾斜があると非常に歩きにくく、東京の道路にはそういう場所がかなり多いこと、大抵の駅には上りのエスカレーター
はあるが下りは少ないこと、地下鉄の駅のエレベーターはたいてい片方の出口にしか
ないことなど、今まで無意識に通り過ぎていた空間が全然違う様相で見えてきました。
 歩行が困難というだけで、一時的に異国にいるかのような気がしました。もしかする
と、留学生の皆さんが自国から日本に初めて来たときに経験する驚きと違和感に類似
した感覚を、ほんの少し経験できたのではないかとも思います。私は足が治るにつれ
て段々元の感覚に戻りつつありますが、皆さんは何ヶ月か暮らしているうちに、日本の様々な習慣に慣れ、あるいは納得していくのでしょうか。
 最後に、気付いたことをもう二つ。東京大学は意外と障害者にやさしい大学であるこ
と、そして留学生の皆さんはとても親切であることです。
         
                                            藤澤るり



 まず、寄稿してくださった皆さんに感謝いたします。皆さんの文章から、かつて日本語
教室で学んだ方の頼もしい成長ぶりを感じました。今後のご活躍を楽しみにしていま
す。
 さて、この一年はやはり直前に起こった大震災の影響の濃い一年だったと思います。日本語教室のホームページには昨年5月に留学生の応援メッセージを掲載しました。この『ぎんなん』26号に収められた作品も震災後の状況を反映したものが多くなりました。また、本研究科が実施した11月の外国人留学生見学旅行では、被災県福島の会津地方を訪れました。厳しい状況にありながらも、温かい福島の方の心に触れ、紅葉盛りの秘湯に泊まり、地酒をいただいて楽しいときを過ごすことができました。
 隣県である茨城県に住む私は、留学生旅行と前後して日立市の友人と久々に会い、北茨城市を訪れました。残念なことに岡倉天心ゆかりの五浦六角堂(いづらろっかくどう)は津波で流失してしまいましたが、幸い近くの旅館、大観荘は無事で、その露天風呂から荒波の打ちつける岩をはさんで対岸に見える塩屋崎灯台をいつまでも眺めてい
ました。11月末、その灯台に8ヶ月半ぶりに明かりがともされたということです。これが
希望の明かりであってほしいと願わずにはいられません。

                                           寺田徳子