文章表現Ⅱクラス   自由テーマによる小論文  

「フライ人」と「ステイ人」―東日本大震災に対する外国人の態度―

 

現代文芸論  マヤ・レンチョフスカ(ポーランド)

 

はじめに

日本は地震や津波がよく起きる国である。そのため、国民や建築を守るための様々な工夫
がされている。
だが、時折、どんな予防策を実施しても、ダメージを避けることができない
こともある。
2011311に発生した東日本大震災はそのような恐ろしい悲劇だった。
地震に伴う津波や余震の被害は大きく、福島第
一原子力発電所事故の影響は何ヶ月以上にも
わたり続いており、全国的クライシスとなった。しかし、日本
人たちは、我慢し、落ち着い
た態度を取り、頑張っていた。彼らの素晴らしい姿勢を世界は賞賛した
[1]
パニ
ックに陥らず、自分の家から離れようとしない日本人は彼らの勇気を示していた。
 ところで、そのとき日本にいた外国人は地震をどう受け止めたのだろうか。多くの外国人
が周りの状況が
よく分からずに、恐怖と心労を抱いて帰国した。また、いくつかの国(オー
ストラリア、フランス、中国、
米国、英国、ドイツ、韓国など)は自国民に東京や他の害を
受けた地域から離れるようにと忠告した。フラ
ンスやチェコはEUの国籍を持つ人のために無
料のフライトを準備した
[2]。しかし、外国人にとって日本から脱出する決定をするのはも
ちろんやさしいことではなかっただろう。

 本論文は、東日本大震災による外国人の日本からの「エクソダス」についての検討を試み
るものである。
日本を出た者、日本に残った者の人数やモチベーションを分析し、これに
基づき、人間の危機に対する態度
を考察する。ただし、拙文では道徳批判をするつもりは
なく、危機に対する人々の反応を分析するにとどめ
る。

 本論

 東日本大震災は最近のできごとであるため、これについての研究はまだほとんど行われて
いない。それ故、
本稿の資料の大半は雑誌や新聞の記事に基づいている。そうした記事や日
本人の一般的な会話の中に、最近、
二つの新しい言葉が登場した:すなわち「フライ人」と
「ステイ人」である。この言葉は外国人の全く逆の
二種類の態度を表す名詞である。前者は
fly”(英語:「飛ぶ」)と 「外人」を組み合わせた造語であり、
「飛行機に乗り、日本
から脱出した外国人」を指す。後者は、同じように“stay”( 英語:「残る」)と外
人を
つなぎ合わせ、「日本に残った人」を定義する。しかし、実はこの二つに属さない、もう一
つのタイプ
がある。これは、帰国せずに、どこか、東北から遠い日本国内の場所へ行って、
休暇を過ごすことにした外
国人である。「Washington Times」新聞によると、日本からの外
国人の脱出が本格化したのは、地震後、最
初の水曜日(2011316日)であった[3]
この日、福島第一発電所からの放射能汚染の危険性のため、作
業員全員がいっせいに立ち
退かされた。多量の放射性物質が外部に放出されたということが明らかになり、
原子力事故
の発生が疑いのない事実だと判明した。そのため、外国人の間にはパニックが起きた。
国外脱出
は、必ずしも個人の決心からではなかった。海外企業や組織も、自社の社員を日本
から移動させた(例えば、
有名な演劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」は芸人を東京ディズニ
ーランドからマカオに移動させた
[4])。
 その結果、地震の直後、311日から22日までの12日間について見ると、成田に着陸する
旅客機の外国
人乗客数は34000人未満で、昨年と比べれば、60パーセントに下がってしま
った。一方、同じ時期の成
田出発便では外国人が161000人を超えており、昨年の20,000
と比較すると8倍にもなっている
[5]
 彼らの帰国理由としては放射能に対する恐怖が最もよく挙げられたものであったとい
[6]。しかし、他の原因としては、次に挙げた理由も考えられよう。まず、母国にいる家
族から帰国を迫られた。また、日本語が
分からないため、ローカル情報が聞き取れない外
国人は不安を感じて安全な所へ離れようとした。ほかにも、
友達や周りの外国人が続々と
帰国すると聞いて、残るのは危ないと思った人間もいたと予想される。さらに、
子供がい
る家族は、多少でも危険があると思えば、子供を守るため、帰国を選んだ。

 しかし、実は飛行機に乗るのもかなり危ないことのようだ。Los Angeles Times誌は、
飛行機に乗ること
で放射能を浴びることもあると述べている[7]。放射能を避けようとし
た結果、放射能を浴びるというパラドッ
クスが生じることもあるという。

 おわりに

 以上、述べたことから、外国人の地震後の「エクソダス」の状況がわかるだろう。はじ
めに述べたように、
この小論では個人の決意を批判するつもりはない。時に、脱出はそれ
にかかった費用や心労を考慮すると、
家に残ることより厳しい選択であったかもしれない。
自分や家族を守ろうとした人間を理解することは難しくない。
しかし、人々をパニックに巻き込んだメディアには責任があるのではないか。また、欧米
やアジアのニュ
ース番組は3月の16日から、福島原発に傾き、地震や津波の被害や日本の
状況報告を忘れがちだった。
センセーショナルな情報を追いかけ、正確な情報を伝える
代わりに誤報を広げた責任は免れまい。

 また、日本で仕事をする外国人には、今回の脱出はどのような結果をもたらすだろう
か。「フライ人」の
行動は自然なものだと、日本人にも共感できるだろう。だが、外国
人には、日本に戻るとこの行動のつけが
出てくるのではないか。仕事に対する責任の
見切りは、仕事に厳しい日本人の目にどう映るだろうか。
日本に自分の会社を設立した
Eric Cole によると「このような難しい時代に会社を諦める者」は資質の弱さを表
した
ことになり
[8]、将来日本で仕事を見つけることが難しくなった。すなわち、それは、
自分の未来を守るた
め、その未来を脅かしたというパラドックスになるのではない
だろうか。



[1] Julie Etchingham、’Japan earthquake and tsunami: People's dignity remains’,‘Daily Mirror’ 2011年3月16日版 http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2011/03/16/japan-arthquake-and-tsunami-people-s-dignity-remains-ut-anxiety-rises-
julie-etchingham-writes-from-akita-japan-115875-22992377/
 (2011.7.19)

[2] Calum MacLeod, ’Foreigners flee Japan as nuclear crisis worsens’, Calum USA Today 2011年3月17日版  http://www.usatoday.com/news/world/2011-03-16-foreign-citizens-evacuate-apan_N.htm  (2011.7.19)

[3] Rick Maese, Erin Cox,‘Anxious foreigners flee Japan’, Washington Times 2011年 3月19日版 http://www.washingtonpost.com/world/anxious-foreigners-flee-apan/2011/03/15/ABrlvnW_story.html  (2011.7.19)

[4] The Associated Press 通信, ’More foreigners leaving Japan as nuclear, quake disaster worries grow’,

http://www.thespec.com/news/world/article/502823--more-foreigners-leaving-japan-as-nuclear-quake-disaster-orries-grow  (2011.7.19)

[5] Associated Press, ‘Number of foreigners leaving Japan soars 8-fold’, Jakarta Post誌, 2011年3月25日版,

http://www.thejakartapost.com/news/2011/03/25/number-foreigners-leaving-japan-soars-8-fold.html (2011.7.20)

[6] Rong-Gong Lin II, Foreigners in Japan, spooked by radiation, heed governments' evacuation warnings, LA Times,

2011年3月17日版 http://articles.latimes.com/2011/mar/17/world/la-fg-japan-quake-fleeing-20110317 (2011.7.19)

[7] 同上

[8] REPORT FROM JAPAN: Residents react to foreigner exodus, Amber Hildebrandt, CBC News Canada, mar18th, http://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/story/2011/03/18/f-rfa-hildebrandt-japan-fri.html (2011.7.18)