読解Ⅱ・読解Ⅳ・文章表現Ⅱクラス共通課題   原子力発電への賛否  

原子力発電をめぐって考慮すべき点

 

  美術史学  ナアマ・アイゼンシュテイン(イスラエル)

 

 原子力発電に関する議論は新しいものではない。おそらく使用しはじめたときから功罪をめぐって

議論
が続けられてきたが、去年起こった東北地方太平沖地震によって福島第一原子力発電所の

事故が起きて重
要な議題となった。ほかの発電方法に比べて、原子力発電は有効に核燃料から

大量のエネルギーを得るこ
とができる。また、大気を煤煙などで汚す石炭や石油を燃やす発電方

法に比べて、直接的な環境汚染は比
較的少ない。しかし少ないと言っても、汚染がまったくないわ

けではない。

 『日本社会再考』によると、100万キロワットの原子力発電所は一年間で250キロのプルトニウム

239
生成する。この放射性廃棄物が確実に密閉できるなら、環境に直接的な影響はないが、プル

トニウム
239の毒性は非常に高い。毒が人体に危険でなくなるまでには100万年もかかると推測さ

れている。
100万年は想像できないほど長い時間である。先史から現代までの人間の歴史全体は

その約
5分の1しかない。そのような長い間、放射性廃棄物を安全に密閉できるかどうかは誰も確

認できないのである。

 ここまでは、廃棄物の問題だけについて述べたが、原子炉の稼動中に故障や事故などが起きた

ら、放射
性物質が漏れる危険性もある。同書によると、プルトニウム239の毒性は1グラムで4,000

人の健康を
害し得る。また、広い土地が放射性で汚染され、農業・居住に使用できなくなるおそれも

ある。放射性物
質を取り除くには数十年もかかる。この期間は推定であるとはいえ、放射性物質に

よる公害は比較的新し
い問題であるため、明確な回答が難しい。

 私は、原子力発電の使用については、その長所は認めるが、短所が多くてしかも深刻すぎると思

うので、
賛成できない。去年起こった福島第一原子力発電所の事故は、事実が推定をはるかに上

回ることがあると
いうことを証明した。9ートルの防壁を建造したにもかかわらず、15ートルの津

波にはこの防壁はほ
とんど意味がなかった。自然災害は政治抗争同様、予言できない。ゆえに、

国民をこのような恐ろしい危
険にさらす理由はないと思う。

 さらに、たとえ発電所に事故などの災害が起こらなくても、放射性廃棄物は溜まりに溜まってい

る。廃
棄物をドラム缶に密閉するのは、実際には処理ではなく、単に猶予することではないか。猛

毒の中身が漏
れ、汚染される危険性ゆえに、次第に溜まるドラム缶を安心して捨てられる場所は

ない。

 現代はすでに安全で、環境を汚染しない太陽エネルギー・風力など代替発電方法が存在するの

だから、
原子力のような危険な方法を利用することは必要ないのではないか。確かに、原子力発

電に比べて、ソー
ラー発電の有効性は低いが、それはおそらく開発に対する投資が足りないため

であろう。現代の大衆文化
では「今」という概念が優先し、「今食べたい」「今買いたい」「今話した

い」などという衝動からファ
ストフード、コンビニやオンラインショップ、携帯電話など反応する商品

が開発されてきた。

 こういう「今重視の社会」では、将来に関する配慮はなされなくなっていくであろう。その結果、おそ

らく汚染の心配のない発電方法にはあまり投資されず、今便利な原子力発電所を使い続けるだろ

う。しか
し、私は十分な投資があれば、新しい発電方法を発見し得ると信じている。「今」を少し離

れ、「将来」
を考えれば、解決に向かうことは間違いない。