口頭表現Bクラス  専門に関連のあるテーマによるスピーチ

陳 進

―台湾美術界において日本美人画の伝統を受け継いだ画家―

 

美術史学  黄 建霖(台湾)          

 

皆さん、こんにちは。私は台湾で美術を学び、現在研究生として東京大学の

美術史研究室
に所属していますので、今日は皆様に台湾美術のお話をさせてい

ただきます。皆さんが台湾
にいらっしゃることがあれば、台湾が誇る台北故宮

博物院にいらっしゃらない観光客は少な
いと思います。ご存知のようにそこに

は中国の明、清時代の宮廷の一流品が所蔵されていま
す。しかし、それは今日

のテーマではありません。今日はおそらく皆さんがあまりご存じで
ないことを

お話ししたいと思います。台湾美術と日本美術のつながりを語る上で欠かせな

存在、女流画家、陳進をご紹介させていただきます。

近代百年の台湾美術史の中では、中国から受けた影響よりも、むしろ日本統

治時代に受け
た文化の衝撃のほうが大きかったと言えます。日本の絵画から受

けた影響はかつてないほど
のものでした。そのひとつは日本の伝統的美人画の

画法です。 

美人画と言うのは、女性をモチーフとした絵画様式の一つです。日本では平

安時代の大和
絵という伝統的な画法から、江戸の浮世絵の巨匠たちの時代を経

て、近代
日本画に至るまで、さまざまなスタイルの美人画が受け継がれてきま

した。
日本美術に詳しい方は美人画と聞いておそらく何人かの画家の名前を頭

の中に浮かべることでしょう。日本統治時代の台湾には
そうした日本美術の流

れを汲む巨匠たちから薫陶を受け、また自分が生まれ育った土地の文
化も取り

入れ、中国と日本の文化の狭間で、台湾人としての意識を日本画の技法を以っ

て表
現した作品を次々と発表した画家がいます。日本統治時代を代表する女性

画家、陳進です。

陳進は1907年に台湾に生まれ、1998年に亡くなりました。女子高校のとき、

東京美術学
校出身の美術教師・郷原古統に才能を見出され、日本への留学を熱

心に勧められて、
1925から女子美術学校の日本画科で4年間勉強しました。

卒業後は
鏑木清方の門下に入り、日本画の勉強を続けました。女子美術学校在

学中には「姿」「
罌粟」「朝」の作品が当時開催された第一回台湾美術展覧会

すなわち台展に入選し、賞賛を受けました。林玉山、郭雪湖ととも
に「台展三

少年」とも呼ばれる陳進は、その繊細な画風と豊かな経歴によって台湾美術史

上、
今も重要な位置を占めているのです。 

 

* 画像による作品紹介:

大和絵より「洛中洛外図」/ 浮世絵より  喜多川歌麿17531806):浮気の相、菱川師宣16181694):

見返り美人 / 鏑木清方18781972)「朝涼」、「伽羅」/ 陳進(19071998)「悠閑」、「合奏」、「化粧」