口頭表現Bクラス  専門に関連のあるテーマによるスピーチ

CDC7キナーゼの機能解析について

 

新領域創成科学  トウ ゲック ティング(マレーシア)

 

 皆さん、こんにちは。今日は、私の研究についてお話したいと思います。

では、テーマから行きましょう。私の研究テーマは、ヒト細胞のDNA複製を制

するCDC7キナーゼ複合体の機能解析です。皆さんの専門とちょっと違います

から、
「うん? CDC7キナーゼ複合体って何だろう?」と考える方がいらっしゃ

ると思い
ます。そこで、今日は図や映像を使ってできるだけわかりやすくご説

明したいと思
います。

さて、皆さん、さっそくですが、これがなんだかわかりますか。これ(映像

省略)
は、ヒトの子宮から取った細胞です。でも、もちろんこれは子宮の中で

はなく、研
究室で培養している細胞の映像です。皆さん、ヒト細胞の構造がわ

かりますか。で
は、この細胞を例として簡単に説明しましょう。

これが細胞で、真ん中の赤いところが、「核」という重要な部分です。ここ

には、
遺伝子あるいはDNAという私たちの個人的な秘密が隠れています。この赤

いところ
に注意してください。赤くなったり、消えたりするでしょう。また、

細胞の数は、
さっきより多くなったでしょう。一体、細胞はどうやって増えた

のでしょうか。は
い、そうです。ひとつの細胞が2つに分かれることにより、

細胞は徐々に増えてい
くのです。このような過程を「細胞周期」といいます。

実は、私たちの細胞は、常
に動いています。でも、新しい細胞を作る際には、

核の中のDNAを丁寧に複製し、
チェックしてから細胞分裂しなければなりませ

ん。そうでない場合、例えば、この
細胞が2つではなく、3つに分かれてしま

ったりすると、異常な状況で、細胞は結
局死んでしまうのです。

では、私が何を研究しているかをご説明します。研究テーマをもう一度見て

くだ
さい。「ヒト細胞のDNA複製を制御するCDC7キナーゼ複合体の機能解析」

です。「ヒ
ト細胞」、「細胞周期」、「DNA複製」についてはご説明しました。

残っているのは、「CDC7
キナーゼ複合体」です。これは何でしょうか。この図

を使って、ご説明しましょう。
これが細胞周期で、DNAの複製、DNAの分配、最

後に新しい細胞を生み出します。

もっとわかりやすくするために、この細胞周期を、社会に見立ててみましょ

う。
新しい世代が同じ社会をつくるために、様々な人々が必要です。この人た

ちは、細
胞の言葉でいいますと、「タンパク質」というものです。CDC7キナー

ゼは、タンパ
ク質の1つです。タンパク質も人間と同様に、チームを組んで、互

いに助け合った
りします。このCDC7のチームは、「CDC7キナーゼ複合体」とい

います。

なぜ、私がCDC7が重要だと思うのかと言いますと、実は、CDC7が癌細胞の中に

大量に存在し、細胞の癌化と関係があると言われているからです。さらに、最

近の
研究から、細胞内のCDC7の量を抑えると、癌細胞が死に、正常細胞の生存

にも影響
がないことがわかりました。そのため、CDC7は癌診断のバイオマーカ

ーとして採用
され、抗癌剤の開発でも注目されています。

それでは、CDC7複合体の機能はDNA複製を制御することなのだと言い切ってよ

のでしょうか。確かに、CDC7複合体はDNA複製を制御するタンパク質の一員と

して、
70年代から現在に至る40年ほどの間、研究されてきました。しかし、最

近の研究
結果を見ると、CDC7は、細胞周期の中で、DNA複製以外の過程でも多く

の役割を果
たしていると考えられるようになりました。そこで、私はこのタン

パク質の新たな
機能解析を目指して研究を始めたのです。

今、様々な実験を行っておりますが、その1つは、CDC7の細胞内の動きを観

察す
ることです。「どうやって」といいますと、実は、さっき皆さんにご覧に

入れたビデ
オの中の細胞には、核に赤い光があったでしょう。あの光は蛍光タ

ンパク質から出
たものです。CDC7に蛍光タンパク質をつけることで、その動き

を観察することがで
きるのです。もう1つの実験は、CDC7の新しいチーム・メ

ンバーを探すことです。

発見された因子は、マウスを用いて、遺伝子操作の実験で変化を検討します。

この研究の結果は、細胞の癌化あるいは老化のメカニズムの解明に貢献する

とと
もに、早期診断や癌治療の新規技術開発に役立つと期待されます。そのた

め、癌研
究の観点からきわめて重要な研究分野になると考えられます。

以上で発表を終わらせていただきます。ご清聴、どうもありがとうございま

した。