読解Ⅲクラス  「橋づくし」

三島由紀夫の「橋づくし」の感想

 

日本史学  ヨハナ・トレリ(スウェーデン)

 

 この小説の面白さの一点は、半世紀以上前の銀座の様子が描かれていること

あろう。今と全然違う銀座が舞台であるので、小説を読みながら当時の地図

を見
ると、20世紀の東京の地理的な変化が良く分かる。

 しかし、この作品の一番面白いところは、小弓・かな子・満佐子の三人の女

人の現実的に描かれた個性であると思う。三人とも長所も短所もある実際の

人物
のように目の前に浮かんでくる。実際の人間のように、理想的な現実性の

ない夢
を見、「願事(ねぎごと)」をする。(ちなみに、スウェーデンでも橋

づくしと
似たような迷信が存在する。どこでもそうかもしれない。)

 この三人の主人公はそのような夢を見ながら、色々な形で現実と出会ってし

い、結局「願事」を最後まで完成することさえできない。そこで興味深いの

は、
もう一人、四人目の女性もいることである。この読者も主人公達も誰もよ

く知ら
ない、みなという人だけが「願事」を完成するのである。

 みなが何を夢見ているかは分からない。何を考えているかも分からない。醜

女でバカにされている人であること以外何も分からない。だからこそ彼女は

現実
的な邪魔に出会わず、「願事」を完成できたのかもしれない。読者として

このよ
うな結果はとてもすっきりする。さらに、バカにされている人だけが成

功するの
も気持ち良いし、読者が最も知りたいこと―彼女の「願事」が何であ

るか―が知
られないまま、謎のままでやり過ごされてしまうのも、こういう現

実性の深い小
説にほんの少しだけの幻想を与え、面白さを深めていると思う。