読解Ⅲクラス  「品川猿」

 

村上春樹「品川猿」の感想

 

  美学芸術学  オリガ・ザベレジナヤ(ロシア)

 

「品川猿」を面白く読んだ。村上春樹の文体はわりと分かりやすいから、

言葉の意味に苦労することなく、あらすじと登場人物の性格に注目するこ

とができた。村上春樹の小説は今までロシア語で読んでいたが、ロシア語

で読むのと日本語で読むのとでは、受け入れ方が大きく異なると思った。

ロシア語で読むと、やはり母国語だから、親しみやすい感じが非常に強い。

どの国でも村上さんの、現代社会を話題にしている小説は受け入れられや

すいだろうと思うが(ちなみに芥川龍之介か夏目漱石をロシア語で読んで

もその感じはしない)、日本語で読むと、著者は現代人であってもやっぱ

り日本人だと実感し、もっと距離があるような感じがした。それはたぶん

言葉のせいだと思う。

「品川猿」の主人公は、今まで読んだ村上春樹の小説の女主人公と違っ

て、ごく普通の人として登場する。結局、幼時から母に愛されなかったた

めに愛情を感じる能力が奪われていたことから、それほど普通ではないと

わかるが、村上さんの好きな、未婚で、タバコとコーヒーばかりで暮らし

ている、痩せている女主人公とはずいぶん相違があると思った。全体の小

説の流れは推理小説のようで、しかも、謎が解けても、普通の日常的な終

わりをもたらすのではなく、想像の世界も重なっているところを面白く思

った。普通の会社員や警察官が生きている東京と、猿が人間のように行動

するようなもう一つの平行する世界を合わせたような小説である。作家の

頭の中にあるだけではなく、我々の日常世界にもそういう未知の面が存在

しているのではないかと考えるようになってしまう。