読解Ⅲクラス  「品川猿」

村上春樹「品川猿」

 

社会学  ロマン・バジュラ(スイス)

 

猿が人の名前を盗む物語がまず不思議なのだ。だが、村上春樹の小説の場合

れ以上だと思われる。その小説の登場人物に次々に出会ったら、おかしいと

時になんとなく奇妙な感じがする。自殺の話や喋っている猿が同じ小説に出

てき
て、笑うべきか泣くべきか完全に分からなくなってしまう。人物達の台詞

によっ
て、ストーリーの雰囲気が急に変わってしまうし、非常に暴力的な言葉

も使われ
ている。小説に没頭すれば人物の話に強く反応し、感情を動かされ

る。

私には、後半に登場する品川区役所職員桜田の、猿に対する態度は非常に暴

的なのに、周りの人物が無反応なのは、きわめて不愉快だと思われる。猿は

確か
に規則を犯したのだが、とてもおとなしくて、別に悪意がないし、彼の態

度は桜
田と正反対である。丁寧に喋っている泥棒猿と暴力的な区役所職員のど

ちらが人
間的であり、または野獣的であるのかさっぱり分からなくなる。それ

でも、桜田
の脅迫をあまり気にせずに、主役やカウンセラーは猿の尋問を続け

る。この点は、
話の雰囲気をこわす上に、私にとってこの小説のすべての登場

人物を泥棒猿以下
のものにする。皆、このかなり魅力的な猿の命より自分の知

りたいことを大切に
しているようだ。結局とても面白い話だと思われたが、不

思議な夢みたいな小説
の中に、狂っているように見える猿いじめの区役所職員

を登場させるのは、私に
言わせれば小説の雰囲気を暗くするので勘弁してほし

かったのだ。