文章表現Ⅲクラス  文化と伝統の継承
 

現代における文化の継承に関する一考察

 

日本語日本文学  カタジナ・スウェック(ポーランド)

 

 現代に生きる私たちは、急速なグローバル化によって促進される文化の均一

化を目の当たりにしている。グローバリゼーションが進展する中で、文化の多

様性の保護、および独自の文化的アイデンティティの維持が重要課題となって

いる。伝統文化の継承方法を考える上で、京都の伝統産業の例が有効な手掛か

りとなる。

古都京都は、長い歴史を持つ都市であり、100年以上存続している企業だけ

でも、1600社を超える。京都は、これまでの歴史的な危機を無事に乗り越え

てきた。江戸初期に徳川幕府が開かれた結果、政治的な主導権を失ってしまっ

た京都は、蓄積されてきた文化資産を生かすことによって独自のアイデンティ

ティを見出すことができた。明治維新の際、東京への遷都により、天皇と宮中

が、京都を離れてしまった時には、海外との交流に活路を開いた。また、現代

では、バブル崩壊に伴う国内市場の縮小は、伝統企業に海外進出を余儀なくさ

せた。業界の閉鎖的なネットワークの存在や、自己宣伝を好まないという京都

人の性格などが、伝統産業の海外への事業展開を阻害してきたが、近年では、

メディアを利用する新商品の開発や、より積極的な海外市場の開拓の試みが見

られる。概括的にいえば、歴史的な危機にしばしば直面してきた京都文化が持

続できた理由は、時代の変化に対する順応性というところにあるといってもよ

いだろう。

 ポーランドにおける伝統文化の継承をめぐる諸問題に関していえば、目覚し

い変貌を遂げたコニャクフ村のレース編みの例が挙げられる。コニャクフ村の

レース編みは、200年に及ぶ歴史を誇る伝統工芸であり、レース飾り、特に手

作りのテーブルクロスやドイリーを中心に継承されてきた。しかし、あまりに

高価であるため、伝統的な装飾品の需要が低迷したので、レース編みの技法を

ランジェリー、特にTバックの制作に応用することにより、一時衰退しかけ

ていたコニャクフ村のレース編みの伝統は、見事な復活を遂げた。今ではそち

らの方で広く知られているとも言える。上記のような伝統文化の維持の試み

は、
文化純粋主義者の激しい批判を浴びるに違いないが、このように、市場要

求に
対応することは、伝統文化の粘り強い生命力の表れとも言えるのではなか

ろう
か。

 そもそも、文化というものは、決して不変のものではあるまい。ある地域に

生きる人々によって、特定の歴史的な状況の中で作られたものであるため、時

代の変化とともに変わっていくのだ。そのため、伝統文化を「有りのまま」に

保存しようとする取り組みは、失敗に終わる運命にあると私は思う。伝統文化

をできるだけ忠実な形で伝達することは大事だが、新しい文化的要素を取り入

れつつ、新たな伝統を生み出す努力は、より素晴らしいものだろう。重要なの

は、伝統文化の尊重と新たな創造性の微妙なバランスを見出すことだ。