文章表現Ⅲクラス  文化と伝統の継承
 

伝統の継承について

 

            美学芸術学  オリガ・ザベレジナヤ(ロシア)

 

現在、経済の発展や先端技術の進歩などで伝統文化は危険な状況にある。

国際化やグローバル化がもたらす外国の文化との混合、それにともなう

様々な新しい現象の登場によって、伝統文化の価値は軽視されるようにな

った。では、各国の歴史に独特な位置を持ち、それを保ち続けようと求め

ている伝統文化は、現代社会で生き残れるだろうか。そして生き残れても

その独自性を保ち続けられるだろうか。

伝統文化の継承を考える場合、まず経済的な面を考慮しなければならな

い。先進国をはじめ、ほとんどの国で伝統文化はいわば趣味になったと言

えるだろう。たとえば、ロシアの伝統服であるサラファンは、祭りの時に

しか見られなくなり、それを作る製造者もお土産としてしか販売できない。

伝統服、世界で有名なラッカーの小物入れなどを生産するだけでは儲けに

ならない。伝統芸も同じ状況にある。歌や舞踊の活動は、ほとんどサーク

ルなどの趣味の団体に限られている。もちろん、プロの団体もあるけれど、

文化の存続というより国際舞台で国の独自性を訴えるのが目的であるよう

に見える。その点で、伝統文化から政治的文化、あるいは経済的文化にな

るという傾向があるとみられる。このように、伝統文化は、今の社会でそ

の内容を重視する少数の団体と、それを売ろうとする国家レベルの組織と

いう、二つの方向に分かれているといえる。

もうひとつの問題は新しい文化と外国の文化との関係である。新しい文

化と伝統文化の衝突の例を挙げると、最近モスクワとサンクト・ペテルブ

ルグで活発になっている、いわゆる建築戦争が頭に浮かんでくる。歴史的

な価値を持つ建物の周辺に住んでいる人が、文化関係の役所と手を組んで

行う、新しい物を建てようとする会社との対立である。そこで人々は生活

の利便性と伝統文化との間の選択に直面させられる。私に言わせると、伝

統建築が残るかぎり、それをなるべく保つべきだが、進歩的価値観と保守

的価値観の対立はまだ続くと思われる。

以上、ロシアの例を挙げてみたが、伝統文化にかかわる活動が経済に影

響を受けるようになったのはどこでも同じであるといえるだろう。その善

悪は別の問題として、このような状況のもとで、長い歴史を持つ伝統文化

の本質をどうやって失わずに存続させるかを、我々は考えるべきではない

だろうか。