集中授業 短編読解クラス  「山椒魚」
 

「山椒魚」の感想

 

韓国朝鮮言語社会  金  静(中国)

 

  今回の授業では19世紀末に生まれ、20世紀に活躍した作家たちの二作品が取り

上げられた。宮沢賢治の「注文の多い料理店」と井伏鱒二の「山椒魚」である。宮沢賢

治の「注文の多い料理店」は比喩やオノマトペを数多く使って描いたおもしろい童話で

ある。それに対し、井伏鱒二の「山椒魚」は文語や比較的硬い文型が多く、難しい感じ

がした。しかし、こうした趣の異なる作品が読めたことは、豊かな日本語の表現を身に

つける機会となり、日本語の学習に役立ったと思う。

 井伏鱒二の「山椒魚」には、谷川の中に生きているさまざまな動物が描かれている。

山椒魚、目高、小蝦、水すまし、蛙が登場するが、それらの動物の運命がおもしろい。

第一の主人公は山椒魚で、第二の主人公は蛙であるが、この作品の結末では、主人

公である山椒魚と蛙は岩屋に幽閉され、目高や小蝦や水すましは外の世界を動き回

っている。私の心の中にはなぜ井伏は登場する動物の中で山椒魚と蛙を主人公に選

んだのかという疑問が生じたが、この作品の原作である「幽閉」という作品が、井伏が

早稲田を中退した翌年に書かれていることを思うと、おそらく井伏は自分を山椒魚にた

とえて作品を創作したのではないか。また、学校へ戻りたいという気持ちが残っていて

「蛙」と「帰る」という発音を掛けて、自分の帰りたくても帰れないという気持ちと境遇を

表しているのではないかと思った。

 「山椒魚」でもっとも好きな表現は、「まったく蝦くらい濁った水の中でよく笑う生物は

いないのである」と「ああ寒いほど独りぼっちだ!」という部分である。前者は現実には

あり得ないことだが、妙におもしろく、後者は通常の日本語表現では使わないものだが

この表現には孤独感がよく表れていると思う。