文章表現Ⅰクラス   闇の消失
  

インド文学・インド哲学・仏教学  ロバート・グロハウスキー(アメリカ)

 

『闇の消失』という文章は、人間にとって最もふさわしい生活のあり方とはどういうも

のかという問いを私たちに投げかけている。つまり、人間がつくりあげた人工的な世

界は、自然の世界を徐々に滅ぼしているということである。この状況が続く限り、私た

ちは大切なものを失っていくのだろう。

 一般には、光は発展した文明を象徴し、闇は原始的な文化や文明を象徴する。さら

に、多くの場合、光はポジティーブな価値を持ち、闇は否定的な意味を担う。しかし、

この文章では光と闇が一般的な意味とは逆の象徴として使われている。光はかなら

ずしも好ましいとは言えないものを象徴し、闇は貴重なものを表している。闇を失うこ

とは、人間の重要な一部分が消えてしまうことだと解釈できよう。

人間も含め、自然のものには光も闇も必要である。多くの植物は夜に成長する。

間にとっても暗闇を体験することは成長の機会のひとつであろう。そうであれば、人間

の本質、人間の奥深いところから私たちは離れていこうとしていることになる。

この文章は都市の発展という現象に対する批判としてとらえるのではなく、人間らし

い生き方を考えようという主張だと取るべきではないだろうか。