読解Tクラス  わが国の正月風景
         

パキスタンのお正月

イスラム学  タイバ・アヌワール(パキスタン)

「明けましておめでとうございます」。これと同じような言葉はパキスタンで

は使われていないが、お正月の儀式はある。元旦の朝に人々はモスクに行ってお

祈りをしたり、断食をする。その日に断食するのは、神様のおかげで1年が希望

どおり過ごせたことを感謝するためであるとともに、翌年も悲しい事件や何かつ

らいことが起こらないように願うからである。

 パキスタンでは年の数え方は月のサイクルで決まる。毎月新月の日がー日とな

り、月末が28日の月も29日の月もある。学校や役所では世界と同じ日にちを使う

が、お正月や誕生日や宗教行事は月のサイクルで決める。今年は2010年12月8日

が元旦だった。

大みそかに女性は家で特別な科理を作る。その日の特別な料理といえば、キ−

ルである。キールは米とミルクを4時間かけて煮込み、アーモンドとさとうを入

れたら完成する。キールを入れるお皿はお正月の1か月ほど前から特別に作られ

る。小さい鍋のような、伝統的なその皿は土で作られる。その中にキールを入れ、

中庭に順番に100枚並べる。その後で、その地域の子供たちが呼ばれる。5時間か

けて作った料理でも、2分ぐらいでお皿は空になる。お皿を持ってきた子供はキ

ールを食べ終わると、そのお皿を大事に取っておく。お皿がなくなったり、壊れ

たりするとその家族はその一年は不幸であると思われているのだ。子供を産めな

い人もそのお皿を大事にすると妊娠すると言われ、毎年そのお皿が配られる。私

も7歳までに7枚お皿をもらい、今もまだ大切にしている。

 1月10日には馬のお祭りがあり、その日は休みとなる。わたしも幼いころ一度家

族と一緒に行ったことがあるが、化粧された馬が鳴きながら現れて200キロメート

ルぐらい行進してから、最初から決められた場所に入るのだ。皆子供づれで見物

して、幸せな気分になったものだ。しかし、時代が変わり、ほかの祭りと同じよ

うに、この日は危険な日となり、子供たちにとって楽しい行事でもなくなった。

この日はさまざまな国から訪れる人も少なくないが、パキスタン人はもう今はぜ

ったい子供づれでこの祭りを見物に行かない。

 お正月が危険になってきたことは事実であるが、私にとってはふるさとならで

はの、いい思い出がいっぱいある。