共催 東京大学文学部現代文芸論・スラヴ語スラヴ文学研究室、東京外国語大学沼野恭子研究室
協力 丸善出版(株)、JIC国際親善交流センター&ジェーアイシー旅行センター(株)

『ロシア文化事典』出版記念シンポジウム

謎のロシア、魅惑の文化——ロシア文化史への新しいアプローチ

この度、丸善出版より『ロシア文化事典』が出版されました。沼野充義・望月哲男・池田嘉郎を編集代表とし、200名以上のロシア研究者が分担して、芸術から日常生活まで、ロシア文化のあらゆる面にわたって解説したもので、ロシア文化を主題とした日本で初めての大規模な事典です。
この出版を記念して、ロシア文化の多彩な魅力をめぐるシンポジウムを開催します。
入場自由(無料)、予約不要。一般公開イベントです。皆さまのご来聴を歓迎します。


日時 2020215日() 午後3時6時15分
場所 東京大学法文2号館2階1番大教室
(本郷キャンパス)

交通 地下鉄丸ノ内線・大江戸線「本郷3丁目」、南北線「東大前」、千代田線「根津」などから徒歩約10分。





『ロシア文化事典』A5版、886ページ、丸善出版、ISBN978-4-621-30413-6(本体20,000+税)

 

プログラム
総合司会 沼野恭子(東京外国語大学)

3:00 開会の挨拶

編集代表:池田嘉郎(東大)・沼野充義(東大)・望月哲男(中央学院大) 佐藤日登美(丸善出版)

3:10 ここが面白い! 『ロシア文化事典』 

沼野恭子(東外大)+沼野恭子ゼミの院生・学生たち(魚住光泰、安島里奈、マリア・プロホロワ、石原知佳、土田真紀子、滝本理貢)
*東外大ロシア専攻の院生・学部生が事典から面白いと思った項目を選んで紹介する。


3:35 アプローチ① 竹田円 × 沼野充義

「ロシアの黒人」フレデリック・トーマスの波瀾万丈の人生 
*竹田円氏はアレクサンドロフ『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた』白水社、訳者。


3:55 アプローチ② 鴻野わか菜(早大) 

ロシア現代アートと宇宙

4:15-4:30 休憩、『ロシア文化事典』他関連書籍展示


4:30あたらしい人たちとあたらしい事典をつくる

池田嘉郎+村田優樹+松本祐生子(東大)

4:55 アプローチ③ 亀山郁夫(名古屋外大)

《二枚舌》と真実――ショスタコーヴィチとスターリン


5:20  アプローチ④ 望月哲男(中央学院大)

『戦争と平和』と『罪と罰』——二人のロシア作家について考える

5:45 質疑応答討論

6:15 閉会


『ロシア文化事典』刊行によせてより 

ロシアはいまだに大いなる謎であり続けている。日本人にとって、ロシアは第一に、重要な隣人である。しかし隣人であるというのに、その素顔はあまり知られていない。それゆえどうしても、実態に必ずしも即していない様々なイメージが一人歩きすることになる。しかもそのイメージはしばしば互いに相容れないような、極端から極端へとわたる。ロシアは一方では、偉大な芸術の国である。文学、音楽、絵画、演劇、バレエ、映画――どの分野を見ても、ロシア人は世界最高レベルの天才を気前よく人類に贈り続けてきた。他方、ロシアは革命や大粛清といった血なまぐさい事件に彩られた、厳しい歴史的宿命を背負った国でもある。甘く切ないロシア民謡の調べに日本人の心はとろけそうになるが、独裁的な権力者や残忍な秘密警察の話を聞くと背筋が凍る。本事典はこのような対極的なイメージによって引き裂かれたロシアに文化の観点から迫ろうとするものだが、それは究極的には、「ロシアとはいったい何か?」という問いに答えようとする試みである。  とはいえ、相手は巨大である。そう簡単には把握しきれない。なにしろ地球の陸地全体の約八分の一(旧ソ連時代には六分の一)を占める、世界最大の国なのだ。日本人の目には、ロシアは国土も、そこに住む人の心も広すぎるように見える。しかもそこには、他者には理解し難い異質な要素が詰まっている。だからこそ、19世紀ロシアの詩人フョードル・チュッチェフは、「ロシアは頭では理解できない」と言ったのだった。しかし私たちは、この事典であえて「頭で理解する」ための土台を提供したいと思う。無謀な試みかもしれない。しかし頭から心へと道が通じ、大いなる謎はやがて大いなる魅惑に変容するに違いない。周知のように日本とロシアの間には、隣人であるがゆえに生じた不幸な歴史的経緯もあり、このこの序文を書いている時点では平和条約さえ結ばれていない。つまり、公式には戦争がまだ終結していないということだ。この異常な状況を打開するのは容易ではないが、ただ一つ確実に言えるのは、互いの文化をよく知ることこそが問題の根本的な解決への一歩になるということである。

(編者代表 沼野充義)



【会場案内図】

 

問合せ先 東京大学文学部現代文芸論研究室

電話 03-5841-7955