スラヴ文学研究公開セミナー・シリーズ開始のお知らせ

東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文研究室/現代文芸論研究室
沼野充義

この度、スラヴ語スラヴ文学大学院演習の時間を使って、主として、新進・若手研究者の報告と討論を随時公開で行うことにいたしました。最初はロシア文学に関する以下の二つの報告を行いますが、以後も随時(さしあたっては不定期ですが)意欲的な研究をしている気鋭の(若手とは限らない)研究者を招いてセミナーを続けたいと考えています。ロシア文学以外のスラヴ文学にも時に枠を広げる予定です。
専門的関心をお持ちの方の来聴を歓迎します。事前予約は不要です。なおテクスト(今回はどちらもロシア語のみ)はコピーを若干部、東京大学文学部スラヴ語スラヴ文学研究室(文学部3号館8階3807号室)に置いておきますが、ご希望の方にはPDFをメールでお送りします。このテクストに事前に目を通してから出席することをお勧めします。

第1回 2015年11月6日(金) 午後4時50分〜6時35分
報告者 奈倉 有里(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程スラヴ語スラヴ文学専門分野
テーマ リュドミラ・ウリツカヤ『陽気な葬儀』における多彩な人・民族・宗教
テクスト Людмила Улицкая, «Веселые похороны» 冒頭5ページ

リュドミラ・ウリツカヤの『陽気な葬儀』は、1992年から1997年にかけて書かれた中編小説で、ウリツカヤ自身のアメリカ体験をふまえアメリカに亡命したロシア人を中心に描いた作品だ。作中では主人公のユダヤ人アーリクをはじめ、さまざまな民族、宗教の登場人物が対話を交わす。そんななか91年の8月クーデターが起き、それをテレビで知った亡命者たちは時代の移り変わりを感じとる。今回は冒頭部分のテクストを読むとともに、作中に表れた民族観・宗教観を探っていきたい。


第2回 2015年11月13日(金) 午後4時50分〜6時35分
報告者 高橋 知之(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程現代文芸論専門分野
テーマ 反省と漂泊——アポロン・グリゴーリエフのヴィターリン三部作について
テクスト Аполлон Григорьев, «Записки софиста» (グリゴーリエフのヴィターリン三部作の第一作«Человек будущего»より)
1845年から1846年にかけて書かれたアポロン・グリゴーリエフのヴィターリン三部作と呼ばれる連作小説(«Человек будущего», «Мое знакомство с Виталиным», «Офелия. Одно из воспоминаний Виталина») を取り上げる。グリゴーリエフはみずからを「漂泊者」と規定しているが、その漂泊の出発点となった問いを明らかにすることが発表の目的である。「反省」をキーワードに、同時期のベリンスキーやツルゲーネフらの反省論と比較しつつ、グリゴーリエフの自己意識の問題を検討したい。

お問い合わせ

東京大学文学部 現代文芸論研究室
e-mail:mitsu
l.u-tokyo.ac.jp(を半角に変換してください)
tel; 03-5841-7955(月〜金、10時半〜17時)