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ゲストのプロフィール ミハイル・シーシキン(Михаил Шишкин) は1961年モスクワ生まれ。ロシアの小説家。1982年モスクワ国立教育大学ロマンス=ゲルマン語学部卒、1995年以降はチューリッヒに住んでいる。1993年に作家としてデビュー、代表的長編に『皆を一つの夜が待つ』(1993)、『イズマイル攻略』(2000、ロシア・ブッカー賞)、『ビーナスの毛(ホウライシダ)』(2005、<国民的ベストセラー>賞と<大きな本>文学賞のダブル受賞)など。最新長編『手紙』(2011、邦訳は奈倉有里訳、新潮社より刊行)も<ボリシャーヤ・クニーガ賞>を受賞した。 また浩瀚な文学・歴史的案内書である『ロシア人のスイス』(1999)はチューリッヒ州賞を受賞している。ドイツ語で執筆したエッセイ集『モントルー・ミソルンギ・アスターポヴォ――バイロンとトルストイの跡を追って』(2002)は、2005年にフランス語訳され、最優秀外国書賞を受賞した。2006年にはモスクワのタバコフ工房劇場で『ビーナスの毛』をもとにした劇「一番大事なこと」が上演され、2012年にはやはりタバコフの演出によって『手紙』の劇場版がモスクワ芸術座で上演された(現在も上演中)。 シーシキンの小説は、チェーホフ、ブーニン、ナボコフから、ジョイスやフランスのヌーヴォー・ロマンなど、ロシアとヨーロッパ文学の様々な伝統を取り入れ、豊かな語彙と音楽的な文体、繊細な心理描写と、実験的な語りの手法や構成を組み合わせたもので、現代ロシア散文の最前線を切り拓くものとして高く評価されている。決して多作ではないが、数年に一冊のペースで発表する長編は現代ロシアで最も権威ある文学賞を総なめにしており、シーシキンはいまや現代ロシアでもっとも実力のある小説家の一人と評価されている。 2010年夏には一度、国際ペン東京大会のゲストとして来日し、その折東京大学でも特別講義「救われた舌―スイスからロシア文学を語る」を行っている。シーシキンの作品の邦訳としては、これまで「バックベルトの付いたコート」という自伝的短篇があるが、(沼野恭子訳、『新潮』2011年5月号)、今回長編『手紙』の翻訳によってようやく本格的な紹介が始まった。 (沼野充義) |
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東京大学本郷キャンパス 構内案内図
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