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  塩川徹也 —— SHIOKAWA Tetsuya

19世紀以降の狭義の「文学」に収まらない学者・文学者の文筆活動(哲学、宗教、歴史、文学)を、特にフランス17世紀に焦点を当てて、文献学と思想史の双方の観点から研究する。興味の中心は、パスカル及びジャンセニスムであり、最近は17世紀末から18世紀初頭にかけて活躍した小説家・反キリスト教思想家・大旅行家であるロベール・シャールにも関心を寄せている。パスカルについては、同時に科学者・哲学者・信仰者であった彼の思索と信仰のあり方を、体験と思想と表現の三つの観点を交差させて浮き彫りにすることが課題であり、著書として、『パスカル 奇蹟と表徴』『パスカル考』等がある。ジャンセニスムについては、元来カトリック宗教改革の一翼として出発しながら、反体制組織として当時の国家と教会から弾圧されたこの宗教運動が、アンシャン・レジームの政治・宗教・社会にどのような影響を及ぼし、特に「良心の自由」の観念の形成にいかなる役割を果たしたかを探求することを目指している。
 

 

  月村辰雄 —— TSUKIMURA Tatsuo

専門はフランス文学研究、とりわけ中世前期のフランス語(アンシャン・フランセ)で書かれた騎士道恋愛物語や恋愛抒情詩を、主としてナラトロジー(物語論)の観点から研究している。また、ルネサンス期のユマニスム(人文主義)について、特にエラスムスを中心として研究を進めているほか、近年ではそれを発展させて、ヨーロッパにおけるレトリック(修辞学)の歴史について、それがどのように教えられたのかという教育史の方面から考察を進めている。さらに、大学院文化資源学専攻文書学専門分野の授業を担当し、幕末・明治期の洋学移入について、学校制度の変遷や同時期のヨーロッパの教育カリキュラムとの連関という観点から研究している。
 

 

  中地義和 —— NAKAJI Yoshikazu

研究の第一の軸はフランス19世紀の詩。ボードレール、ランボーを中心とする個別詩人研究と併行して、詩言語の変遷の論理と様態とを、世紀を縦断する広い視野で捉えること。伝統的韻文の形骸化の意識の深まりとともに、詩句が厳格な規範から解放されて自由詩に行き着く動きが一方にあり、近代特有のジャンル「散文詩」の発生を伴う散文の変質が他方にあるが、歴史文化的ファクターを考慮しながら、これら二つの動きの関係を探ることが目下の課題である。もうひとつの軸は、ル・クレジオを中心とする現代小説の研究。「フランス」を相対化する視点をもつ作家・作品に関心がある。
 

 

  塚本昌則 —— TSUKAMOTO Masanori

専門は、フランスの20世紀文学。とりわけポール・ヴァレリーを 中心に、フランス近代文学を《詩学》(制作学)の観点から研究してい る。《詩学》とは、ジャンルとしての「詩」ではなく、テクストが産みだされる時に働くさまざまな力、矛盾、危機を解明しようとする研究で ある。また、言葉とイメージとの関係にも興味があり、夢、絵画、写真 といったイメージの多様な現れを、フランス近現代の作家たちがどのよ うに言語化しようとしたかも追求している。これらの研究を通して、 《近代》という時代の特質を捉えることを目指している。


  野崎歓 —— NOZAKI Kan
  (Mail: kanozaki@l.u-tokyo.ac.jp [@を半角に直してください])

専門は19世紀の詩人・作家ジェラール・ド・ネルヴァル。旅行記から夢の物語へと移行する散文テクストの豊かな可能性に魅了されてきた。今後はネルヴァルもその一翼をになう、19世紀前半における「芸術家小説」の隆盛という現象に取り組むつもり。他方、フランス小説の現在に関心を寄せ、翻訳に励んでいる。映画も研究対象の一つ。拙著『フランス小説の扉』『五感で味わうフランス文学』『ジャン・ルノワール 越境する映画』などを気楽に読んでもらえると、関心のありかをおわかりいただけるだろう。


  マリアンヌ・シモン=及川 —— Marianne SIMON-OIKAWA

専門は、フランスと日本におけるテキストとイメージ研究です。テキストとイメージ研究とは、絵画に関するテキスト、テキストからインスピレーションを得た絵画(イメージ)、イメージ化したテキスト、さらにタイポグラフィーや本の挿絵なども研究対象としています。その中で、私は特に絵画に関するテキストとイメージ化されたテキストに興味を持ち、ビジュアル・ポエトリー(視覚詩)、文字絵などを研究しています。フランスだけでなく、日本の作品も研究していますから、その意味では純粋なフランス文学の分野というよりも、日本とフランス、テキストとイメージという二重の比較研究になるわけです。

 

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