開催日 2012年7月11日

文学部心理学研究室では,第13回心理学研究室セミナーとして以下のような講演会を開催しますので,ふるってご参加下さい。なお,講演内容は大学院生以上を想定しております。

第13回心理学研究室セミナー

日時:2012年7月11日(水) 午後5時から
場所:法文1号館1階 113教室

【講師】 村上郁也先生(東京大学大学院総合文化研究科)
【演題】 位置ずれ検出過程の解明に向けての視覚順応アプローチ

【要旨】 傾いた線分刺激を長時間観察した後、直立した線分が反対方向に傾いて見える。同様に、複数要素の横位置をずらして配置すると、要素間に明瞭な位置ずれないし傾き印象が知覚されるが、これを長時間観察した後では、縦に並んだ要素が反対方向に位置ずれして見える。後者の現象では、輝度定義の要素でも、輝度コントラストのような二次属性で定義された要素でも、順応刺激として効果的である。これらの傾きや位置ずれの検出に関わり、順応可能であるような脳内メカニズムが、視覚情報処理のいずれの段階に位置してどのような特性をもつかを調べるために、心理物理学的実験を行った。まず、位置ずれ刺激の各要素中が輝度定義の傾きをもつような刺激で、要素内の傾きと要素間の位置関係で定義される位置ずれの傾きとの間の協調的関係があるか、すなわち要素内が特定の傾きのときに位置ずれ残効が強くなるか調べて、そのような依存性があることを見出した。次に、一瞬だけ呈示されたフラッシュ刺激の位置が、同じ場所に呈示した運動刺激に比べて知覚的にずれて見えるフラッシュ・ラグ効果という現象を用いて、この錯視によってフラッシュ刺激と運動刺激の見かけ上の位置ずれが見える場合にそれが順応刺激として効果的かどうか調べ、後に位置ずれ残効が生じないことを見出した。さらに、一瞬だけ呈示されたフラッシュ刺激の位置が、近傍に呈示した運動刺激の運動方向側に位置ずれして見えるフラッシュ・ドラッグ効果という現象を用いて、この錯視によって2個のフラッシュ刺激の間に見かけ上の位置ずれが見える場合にそれが順応刺激として効果的かどうか調べ、後に位置ずれ残効が生じないことを見出した。これらの実験結果より、要素間の位置ずれをコードする脳内メカニズムが、他の処理段階との関係においてどの段階に位置するとみるのが妥当か、議論する。