担当教員 藤井省三 | 学期:夏 | 月・4 | 赤門総合研究棟721 |
本ゼミでは上海でデビューした女性作家で村上春樹チルドレンの一人でもある安妮宝貝(アンニー・パオペイ、Annie Baby)のチベットを舞台とする小説『蓮花』を読む。作品の読解に当たっては、各種の辞典・事典・地図・文献目録などの工具書および作品に関連する新聞・雑誌・単行本などの調査が必要とされる。このような近代中国研究の基礎的工具書に習熟することも本ゼミの目標である。
また本ゼミでは研究書2冊についてゼミ生各自がレポートを提出し、これをめぐって討論を行う。
授業計画:
4月9日開講、ガイダンス
教科書:
参考書:
中国語初級修了以上の語学力が必要。文学部講義「中国文学史概説(近現代)」未履修の者は、『中国語圏文学史』(東京大学出版会、2011年)を通読しておくこと。 |
担当教員 藤井省三 | 学期:通年 | 隔週火・1 | 赤門総合研究棟623 |
東アジア比較文学研究の視点から台湾文学を広く研究する。
授業計画: 東京台湾文学研究会例会と日本台湾学会大会の報告を中心に研究する。毎回前半、1名あるいは2名が研究報告を行い、後半、全員で討論を行う。 教科書: |
担当教員 藤井省三 | 学期:夏 | 月・5 | 法文1号館210教室 |
本講義は魯迅の短篇小説集の読書を通じて、現代中国文学の原点を探ることを目標とする。
授業計画: 1 ガイダンス 2 「祝福」Ⅰ 3 「祝福」Ⅱ 4 映画「祝福」 5 「酒楼にて」Ⅰ 6 「酒楼にて」Ⅱ 7 「石鹸」 8 「愛と死:涓生の手記」 9 映画「愛と死:涓生の手記」 10 森鷗外『舞姫』との比較 11 映画「愛と死:涓生の手記」 12 「奔月」 13 「非攻」 14 映画「非攻」 15 総括
4月9日開講、初回は講義形式で行い、二回目以後は、感想を語り合いながら読み進めていきたい。中国で映画化された『祝福』と『傷逝(愛と死)』、香港映画の『墨攻』の参考上映も行う。日本語訳または中国語原書の魯迅短篇集『彷徨』から「祝福」「酒楼にて」「愛と死(原題:傷逝)」「非攻」などの名作を読む。 |
担当教員 藤井省三 | 学期:夏 | 隔木・4-5 | 赤門総合研究棟738 |
東アジア比較文学研究の視点から、実証研究、理論研究、作家・作品研究を行う。
授業計画: 1 1927年11月19日~ 2 1927年11月23日~ 3 1927年11月27日~ 4 1927年12月1日~ 5 1927年12月5日~ 6 1927年12月9日~ 7 1927年12月13日~ 8 1927年12月17日~ 9 1927年12月21日~ 10 1927年12月25日~ 11 1927年12月29日~ 12 1927年12月30日~ 13 1928年1月の劉吶鴎 14 1928年2月の劉吶鴎 15 総括
4月19日(木)より原則として隔週開講予定。
教科書: |
担当教員 藤井省三 | 学期:冬 | 金・5 | 駒場1号館150 |
魯迅(ルーシュン、ろじん、1881~1936)は1902~09年まで明治末の7年間を日本で留学生として過ごし、夏目漱石や森鴎外らの影響を受けた。帰国後も芥川龍之介、小林多喜二ら同時代の日本文学に深い関心を寄せている。
魯迅は辛亥革命(1911)から五・四運動(1919)以後に至る中国の変革期に際し、漱石『坊つちゃん』(1906)に共感を抱きつつ、中国国民性批判の小説「阿Q正伝」(1923)を書き上げて、国民国家形成のために自己否定すべき「阿Q」像を確立した。「阿Q」像とは次のように仮に定義できよう――通常の名前を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、旧共同体全体の倫理的欠陥を浮き彫りにし、読者を深い省察に導く人物。 「阿Q」像は日本では太宰治の戦後作品や大江健三郎の初期から晩期の作品、そして1979年ポストモダン社会成立前夜にデビューする村上春樹に影響を与える(例えば『羊をめぐる冒険』の「鼠」や「駄目になった王国」の「Q氏」)など、戦後日本の国民的転換期に、自己否定されるべき各種人物像へと展開している。 本講義では魯迅を軸として、このような日中両国の現代文学の流れについてお話ししたい。 授業計画: 1 中国文学とは何か、文学史とは何か 2 1902~09魯迅の日本留学と漱石体験 3 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)① 4 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)② 5 謎の「狂人日記」(1918):狂人のモデルからシャーロック・ホームズまで 6 芥川龍之介と魯迅 7 芥川龍之介「毛利先生」(1919年1月)と魯迅「孔乙己」(1919年3~4月) 8 1922年“盲詩人”エロシェンコの魯迅邸滞在と魯迅「端午の節季」「あひるの喜劇」 9 魯迅「藤野先生」と太宰治『惜別』 10 竹内好の戦中期魯迅論と戦後期太宰治批判 11 張愛玲と室伏クララ 12 1979村上春樹デビューと魯迅の影:『風の歌を聴け』と「中国行きのスロウ・ボート」 13 村上春樹における魯迅「阿Q」像:『1Q84』ほか 14 中国の村上春樹チルドレン:衛慧、安女尼宝貝、田原、韓寒、郭敬明 15 期末レポート(1600~2000字) 授業の方法: 中国出張予定のため10月26日(金)に開講する。授業は基本的に前半60分間を講師による講義とし、後半30分を受講生からの質問に基づく討論とする。パワーポイント、DVDなどの映像も多用したい。 教科書: 藤井省三著『魯迅――東アジアを生きる文学』岩波新書 参考書: 魯迅『故郷/阿Q正伝』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫 魯迅『酒楼にて/非攻』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫 藤井省三『20世紀の中国文学』放送大学教育振興会 藤井省三『村上春樹のなかの中国』朝日選書、朝日新聞社 藤井省三『魯迅事典』三省堂 |
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文学部教員リレー講義 | 学期:夏 | 火・5 | 駒場新5号館 522教室 |
個別の言語・国を越えて、世界の古典として学生時代に読んでおくべき著作について、幅広い視野から読解・分析していくための授業である。文学部教員のうち様々な言語・文学の専門家の共同(リレー講義形式)で開講する。文学を専門とする教員が中心となるが、歴史、哲学、聖書学などの専門家にも加わっていただき、文学の分野に限らず、多角的に世界の古典的名著にアプローチする。文科系、理科系を問わず、人類の知的遺産にできるだけ幅広く接し、今後の勉学と教養形成の基礎としていただきたい。また文学部への進学を希望する学生のためには、将来のより専門的な読書への手がかりが得られることを期待したい。
毎回具体的な作品を取り上げ、専門の教員が講義を行う。具体的な作品と担当教員は以下の通り。それぞれの授業の趣旨については、学期始めに配布する詳細計画表を参照のこと。なお、以下の一覧は必ずしも実際の授業の順番通りではない。 (1)イントロダクション-世界の古典的名著へのアプローチ(沼野) (2)紫式部『源氏物語』(藤原) (3)シェイクスピア『ハムレット』(大橋) (4)ドストエフスキー『罪と罰』(金澤) (5)チェーホフ短編(沼野) (6)カフカ『変身』(沼野) (7)魯迅『阿Q正伝』(藤井) (8)フォークナー『響きと怒り』(諏訪部) (9)ランペドゥーサ『山猫』(浦) (10)ガルシア=マルケス『百年の孤独』(野谷) (11)大岡昇平『レイテ戦記』(野島(加藤)) (12)聖書(特に創世記)(関根) (13)ハイデガー『存在と時間』(熊野) (14)総括シンポジウム 世界の名著とは何か? (沼野他 複数教員による討議) (15)受講生と教員との質疑応答・自由討論 授業の方法: 以下に挙げる文学部教員(50音順)によるリレー講義形式。カッコ内は所属研究室。 浦一章(南欧文) 大橋洋一(英文) 金澤美知子(スラヴ文学) 熊野純彦(倫理学) 諏訪部浩一(英文) 関根清三(倫理学) 沼野充義(現代文芸論) 野島(加藤)陽子(日本史) 野谷文昭(現代文芸論) 藤井 省三 (中文) 藤原 克巳(国文) 参加する教員は全部で11名にのぼる。ただし沼野がコーディネーターとして毎回出席し、学期を通しての授業相互の関連付けや調整につとめ、聴講者の様々な問合せの窓口となる。 特定の教科書は使用しないが、参考文献などについては、授業時に各教員がそれぞれの専門的立場から紹介する。また学期初めに、授業予定表と全体にわたる参考文献表を配布する予定。特定の教科書は使用しない。 授業で取り上げる著作を読むためには、以下の版を薦めます。以下に指示のないものについては、学期始めに配布する詳細なリーディングリストを参照してください。 魯迅『故郷/阿Q正伝』(光文社古典新訳文庫) フォークナー『響きと怒り』上・下(岩波文庫) ランペドゥーサ『山猫』(岩波文庫) 大岡昇平『レイテ戦記』全三巻(中公文庫) 『旧新約聖書』については、手持ちの版の何れでも可。新たに購入するならば新共同訳を薦める。大部なので、冒頭の「創世記」その他の部分をピックアップして論ずる。 ハイデガー『存在と時間』 ・専門的な関心を有する者には、原祐・渡邊二郎訳(中公クラシックス)を、 ・一般的な関心を有する者にすぎない者には、細谷貞雄訳(ちくま学芸文庫)を薦める。 特定の教科書は使用しないが、参考文献などについては、授業時に各教員がそれぞれの専門的立場から紹介する。また学期初めに、授業予定表と全体にわたる参考文献表を配布する予定。 特定の分野の予備知識は必要としません。理科系、文科系を問いません。通常の授業では考えられないような大作をあえて次々に取り上げるので、入門・概観コースとして計画されているとはいえ、このすべてを消化するのは率直なところ、なま易しいことではありませんが、世界の古典的名著を広く読もうというチャレンジ精神と読書欲に燃える諸君の受講を歓迎します。 |