2002年度開講講座

応用倫理教育プログラム

  単位はすべて2単位です。

夏学期

冬学期

タイトル 講師 時間割
応用倫理入門 熊野 純彦 他 水曜2限
現代倫理特殊講義 「哲学と倫理学の間」 高橋 久一郎 月曜5限
応用倫理研究I 「生命倫理問題の諸相」 小松 美彦 金曜2限
応用倫理研究I 「ピーター・シンガーをめぐって」 一ノ瀬 正樹 火曜3限
タイトル 講師 時間割
生命倫理特殊講義 「医療倫理の哲学」 樽井 正義 金曜3限
生命倫理特殊講義 「科学技術政策と生命倫理」 米本 昌平 集中
環境倫理特殊講義 「環境と行政の倫理」 桑子 敏雄 月曜4限
環境倫理特殊講義 「環境倫理学の枠組を考える−普遍性と多元性の狭間で」 鬼頭 秀一 月曜1限
現代倫理特殊講義 「ケアと倫理と政治」 川本 隆史 集中
応用倫理研究I 「比較文化的視点から見た生命観と生命倫理」 池澤 優 金曜4限

通年

タイトル 講師 時間割
応用倫理研究III 「環境−その自然と人為」 松永 澄夫 他 木曜5・6限
応用倫理研究III 「人間の尊厳、生命の倫理を問う」 竹内 整一 他 水曜5・6限

応用倫理入門/夏学期/2単位/水曜2限

講師:
熊野 純彦 他
授業内容:
 初心者を対象として、応用倫理の各領域への入門を目標とする。開講日に「序論」を展開して導入をはかる他、「生命倫理」「環境倫理」「現代倫理」の各領域について、それぞれの担当者が各4回ずつ講じる。使用テクスト、参考文献等は、各担当者がそのつど指定する予定。

現代倫理特殊講義 「哲学と倫理学の間」/夏学期/2単位/月曜5限

講師:
高橋 久一郎
授業内容:
 「応用倫理学」が日本に紹介されてから15年ほどたった現在、応用倫理学はこうした「応用倫理教育プログラム」が組まれるほどに、その学問的・社会的意義が認められるにいたっている。しかし同時に、一方では、英米でいうpolitical science的あり方をとることは当然としても、それにとどまらず露骨な「政策論」へ、他方では、良心的な営みではあるものの、結局は個人の意識に回収する「情緒論」に流れつつあることも事実である。
 この講義では「(応用)倫理学」が古代ギリシアにおいて「哲学」として始まったことに立ち帰って、現代における応用倫理学の意義を検討したい。
   

応用倫理研究I 「生命倫理問題の諸相」/夏学期/2単位/金曜2限

講師:
小松 美彦
授業内容:
 グレゴリー・E・ペンス『医療倫理1』(みすず書房、2000年、5500円+税)をテキストにして、生命倫理をめぐる諸問題を考察する。本テキストは、アメリカの生命倫理学を形成してきた著名な具体的事例を、医師による自殺幇助、生殖補助技術などの分野ごとに紹介し、多面的な分析を行った労作である。参加者は、前期課程の応用倫理学もしくは同等のレベルをクリアしていることが望ましいが、必ずしも条件とはしない。ただし、参加者全員に、少なくとも一度のレジュメ発表と議論の進行役を課す。種々の事例に対して、微視的かつ巨視的な眼差しを獲得するとともに、アメリカ型生命倫理学を相対化することを目指す。

応用倫理研究I 「ピーター・シンガーをめぐって」/夏学期/2単位/火曜3限

講師:
一ノ瀬 正樹
授業内容:
 現代の代表的な応用倫理学者、ピーター・シンガーの『生と死の倫理』(昭和堂)を読みながら、生死にまつわる現代の生命倫理の主要なトピックについて討論していく。シンガーが本書で扱う問題は、脳死、臓器移植、新しい生殖技術、選択的人工妊娠中絶、安楽死など、現代医療技術の水準のなかで新たな倫理観が求められている課題である。シンガーは、「パーソン」概念に関するラディカルな理解を背景に、思い切った議論を展開していく。「動物の権利」の提唱者としても著名なシンガーの、透徹した論の運びに学びながら、最終的には現代に生きる私たち自身の問題として自発的に議論を創発していきたい。なお、訳書をテキストとして用いるので、生協などを通じて必ず準備しておいてほしい。

生命倫理特殊講義 「医療倫理の哲学」/冬学期/2単位/金曜3限

講師:
樽井 正義
授業内容:
生命倫理の原理として顕在的、潜在的に示されているものを検討し、そこに哲学的に異なる立場が前提されていることを明らかにする。そのうえで、哲学的立場の相違が課題への対応にどのように現れるのかを、HIV/AIDSをめぐる生命倫理的問題に即して考察する。

生命倫理特殊講義 「科学技術政策と生命倫理」/冬学期/2単位/集中

講師:
米本 昌平
授業内容:
 アメリカにおける生命倫理の成立の歴史を概観したうえで、この種の問題を、新しい医療技術や生物技術と社会的価値観との調整の問題ととらえ、技術規制のための政策立案の視点から論じる。そのための方法論として、関連する政策の国際比較を行いこれを介して、臓器移植・生殖技術・診断技術・人体実験やヒト組織を用いる研究・ゲノム研究など具体的な技術規制を展望し、あわせて国際的対応についても言及する。

環境倫理特殊講義 「環境と行政の倫理」/冬学期/2単位/月曜4限

講師:
桑子 敏雄
参考書:
桑子敏雄『環境の哲学』講談社
授業内容:
 環境にかかわる行政哲学・行政倫理の構築を展望する。あわせて企業、NPOを含む組織の倫理と、個人の倫理のかかわりについて考察する。講義は参加者のレポートと討議を中心に運営する。環境問題に強い関心をもつ者を対象とする。

環境倫理特殊講義 「環境倫理学の枠組を考える−普遍性と多元性の狭間で」/冬学期/2単位/月曜1限

講師:
鬼頭 秀一
授業内容:
 いま世界のさまざまな地域で起こっている環境問題、例えば開発と環境保全という問題に対して、環境倫理学は何を提示することができるだろうか。そこでの、何らかの解決、あるいは合意の形成ということに対して、ある種の普遍的な指針を提示することができるのだろうか。地球全体、あるいはさまざまな地域における、環境にかかわる意志決定に関して、地域の文化や社会的特殊事情を鑑みたとき、環境倫理学はどうかかわることができるのだろうか。そのあたりの問題を、具体的な事例の分析も含めて、環境倫理学の枠組みがどうあるべきか、特にその普遍性にかかわる問題を中心に講義したい。鬼頭秀一『自然保護を問いなおす−環境倫理とネットワーク』ちくま新書、は講義の前提として読んでおくことが望ましい。教科書は特に使用しない。

現代倫理特殊講義 「ケアと倫理と政治」/冬学期/2単位/集中

講師:
川本 隆史
授業内容:
 心理学者キャロル・ギリガンがその著『もうひとつの声』(1982年)で「正義の倫理」と対置した「ケアの倫理」。これは「すべての人が他人から応えてもらえ、仲間として数えられ、誰一人として取り残されたり傷つけられたりしてはならない、とする洞察」であり、葛藤状態にある複数の責任と人間関係のネットワークを重視し、「文脈を踏まえた物語的な思考様式」によって目前の苦しみの緩和を図ろうとする。
 本講義では、ギリガンの問題提起を受けて始まった「正義vsケア」論争を手がかりにしながら、両者の統合を心理的な成熟目的に定めるのではなく、正義を「正しい・まともな」という形容詞に差し戻すことによって、「まともなケア」あるいは「ケアの正しい分かち合い」をサポートする諸制度を構想する理路を探りたいと思う。日本の介護保険制度も重要な検討素材となるであろう。

応用倫理研究I 「比較文化的視点から見た生命観と生命倫理」/冬学期/2単位/金曜4限

講師:
池澤 優
授業内容:
 生命倫理は欧米で生成した新しい型の生命観と見ることも可能であるが、その場合、それが果たして普遍性を持つ倫理として受容可能であるのか、在来の生命観と衝突する局面がないのかという問題があろう。この演習では世界の諸民族における広い意味での生命観を理解し、その中に生命倫理の価値観を客観的に位置づけるための基礎的な知識を獲得することを目的としたい。具体的には表題にかかわるような論文リストを担当教官が配布し、出席者は各々そのリストの中の論文を担当して、その内容につき発表し、それに基づいてディスカッションすることを考えている。(論文は日本語を予定しているが、出席者に応じて英語論文も含めるかもしれない)。初心者でも参加できる演習を予定している。

応用倫理研究III 「環境−その自然と人為」/通年/2単位/木曜5・6限

講師:
松永 澄夫 他
授業内容:
 環境問題が話題になるときは主として自然環境のことが想い浮かべられるが、その自然ですら人の関わりのもととなるものとして考察される必要があり、その関わりは価値的な関わりなのである。また、人の環境としては社会的環境や文化環境も重要なものであり、これらも当然に価値の観点抜きには概念として成立しない。環境概念においては様々な種類の価値概念が錯綜的に含まれている。それらの価値と価値判断の系譜を辿る仕方で環境概念の複雑な構造をほぐしたい。

応用倫理研究III 「人間の尊厳、生命の倫理を問う」/通年/2単位/水曜5・6限

講師:
竹内 整一 他
授業内容:
 人間が尊厳であるとする思想根拠から現実に生きるアクチュアルな場面での生命倫理の実際まで様々なレベルの問題を多分野交流的に問う。担当者とテーマの日程は以下の通りです。
4・24 竹内整一  (主査 倫理学)    「無」の形而上学と人間の尊厳
5・22 西垣通   (情報学環 情報学)  刺客(テロリスト)の青い花
6・12 一ノ瀬正樹 (哲学)        「死の所有」の観念に寄り添う生命倫理の眺望
7・10 森岡正博  (大阪府立大 生命学) 生命倫理学の課題と将来
9・25 甲斐一郎  (医学部 健康科学)  医療倫理学のはじめに
10・23 猪瀬直樹  (作家)        メディアと人間
11・20 島薗進   (宗教学)       いのちの利用に対する疑義
12・18 苅部直   (法学部 政治思想史) 国家へのニーズ・生命へのニーズ
1・15 小松美彦  (東京水産大 生命倫理)バイオエシックスの限界と陥穽

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