アジア歴史空間情報システムによるグローバル・ヒストリー

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プロジェクトの概要


研究目的・意義

欧米を中心に展開されてきたグローバル・ヒストリー研究は、大きな歪みをもっている。資料蓄積の圧倒的な差を主な要因として、欧米が自らの近代――欧米がグローバルな展開を主導した時代――を照射することを主眼としてなされ、結果としてアジアの近代の主体的な発展とその独自の意義に無頓着であることである。そこで描かれるアジアは、欧米の宗主国によりそれぞれ統治される個別従属空間であるか、たとえ直接統治の下になくとも、近代欧米世界に従属する脇役として認識される。仮にアジアの一部に高度な歴史的発展が認められるという議論があっても、それはあくまでその後の近代世界の展開の中で取り残される出発点の位置と意義を与えられるだけである。一方のアジアの側の歴史研究も、植民地支配から脱し、国民国家を築き上げることに精力を費やさざるを得ないという背景から、アジア地域全体としての歴史発展の共通性とその中での独自性、固有の意義を共同して見出そうという意識を欠いてきている。このような研究状況に対して、日本の歴史研究者、とりわけ「グローバル・ヒストリー」を標榜する研究者は、交易史・海域史を中心に、アジアの共通性を抉り出し、提示してきた。
本研究は、こうした交易史・海域史研究が、いわば線的なつながりに注目してきたことに対し、開発を前面に出し、面的な発展と変化を扱うことに大きな特徴がある。そして、面的な発展における個性と共通性を、アジア歴史空間情報システムの確立とその活用によって解明する。本研究において広がりが期待される学問領域は、狭い意味での歴史学だけでなく、経済史学、国際政治史、環境社会史、地理学、経済学、統計学などである。また、海外の研究者とともに共同研究を行うことで、日本の研究のグローバル化についての一つのモデル・ケースとなることも目指している。

メンバー

これは日本学術振興会の「課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業: グローバル展開プログラム」に採択された研究プロジェクトです。